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昨年の同時期に登った九重山の帰り道に見た雄大な阿蘇の雪景色が印象深かったので、次はここへ行くと決めていた。

ところが、8月頃より噴火警戒レベルが2に上がり、登山規制により最高峰の高岳へ行くルートはごくわずかに限られてしまった。その後も火山活動は活発化してニュースにまでなる。さらに一昨年の台風により崩落している登山道も多く、ほぼ、「仙酔尾根から高岳の往復」というルートに絞られた。噴煙の状況によっては、噴火口を有する中岳を通過して高森町側へ下山するということも考えていた。いずれにしても山頂部に宿泊施設はなく、山麓からの日帰り登山となった。

出発前にライブカメラでも見ていた通り、今年の阿蘇には全く雪がない。ピッケルもアイゼンも要らなそうであったが、念のため6本爪の軽アイゼンを持参した。その上、日帰りなので、荷物の量も例年に比べかなり少なくて済んだ。

12月29日、新幹線と特急「あそぼーい!」を乗り継いで、JR宮地駅に到着。そこから歩いて15分のところにある「かんぽの宿」に泊まった。


●2014年12月30日

夜明け前の6時半過ぎに「かんぽの宿」を出発。
仙酔峡まで続く車道を登り、約50分で登山口のだだっ広い駐車場に着いた。





舗装された地面には、火山灰がうっすらと積もっていて硫黄の臭いが立ち込めている。まだ時間が早いからだろう、車は一台も停まっていなかった。
目の前にある山の姿も、上の方は雲(噴煙?)に閉ざされて見えなかった。
天気予報では曇りのち晴れなので、天気の回復に期待しつつ登山道に入っていく。




バカ尾根と呼ばれる単調な登り坂である。前半は斜度がゆるい。
それでも、岩と砂礫が火山灰によって固められた、ひたすら歩きにくい道に苦戦する。
岩に手をつくと、一瞬にして手袋に大量の灰がつく。それをズボンではたくと、ズボンも真っ白になる。
やがて手をついて上がらなければいけない場面も増え、いちいち気にしていられなくなった。




ずっと右肩にMTBを担いでいる状態が続く。
天気は一向に良くならない。時おり強風が吹き付ける。
後ろを振り返ってもやはり駐車場に車はなく、誰も登ってきていないようだ。

標高が上がるにつれ、寒さが沁みるようになってきた。ザックの中に使い捨てカイロが入っているのだが、風が強いし取りだすのも面倒だ。
地面は一面灰なので、座って休憩するのも面倒。朝から何も食していないので空腹のはずだが、全く飲食する気にさえならない。




標高1350mを過ぎると、フィックスロープが現れた。
いかにも切れてしまいそうな古いロープだが、このロープに全体重を預けなければ、MTBを担いだまま通過することはできない。嫌な区間だ。
しかもステップがうまいこと合わず、同じ姿勢のまま後戻りをすることを何度か余儀なくされた。後ろが見えないので、なかなかの恐怖である。
ロープの設置があったのはここだけ。他にもロープが欲しい場面は幾度となくあったが、無理やりよじ登ったり、別のルートを探すなどして対処した。




後半は斜度が増し、溶岩がただれたような曖昧な道になる。黄色のペンキと木標を頼りに道筋を定める。
気がつけば、足元の火山灰は霜で覆われ、その下は一面氷と化している。標高1450m付近で、軽アイゼンを装着する。
念のため持参してきた軽アイゼンだが、これがなかったら上まで上がれなかっただろう。

しかし、しばらくすると70歳くらいの男性が一人、上方からアイゼンなしで降りてくるのとすれ違った。場所にもよるが、地面はツルツルの氷であるというのに信じられない。自分は、仮に自転車がなかったとしても無理であろう。
今回はスパイクタイヤを装着していないので、タイヤが滑って運びづらかった。




天候は一向に回復せず、冷たい風が吹き荒れた。フードの上からパラパラと音がする。どうやら火山灰が降り注いでいるようだ。
残りの標高差100mは、噴煙に巻かれて光が届かず、一面灰と氷に覆われた荒涼たる景色に様変わりした。
寒いので薄着であることを後悔したが、ザックから中間着を取り出して着る気力もない。




二時間以上かけて稜線に上がると、硫黄の臭いが一層濃くなった。天候が悪いのは、噴煙が立ち込めている頂上付近だけかもしれない。
火山灰も次から次へとパラパラ降ってくる。口の中が灰でジャリジャリしている。




10時、阿蘇山最高峰の高岳(1592m)に到着。風が強くて休憩などしていられない。
すぐに中岳に向けて稜線を歩き出す。




しかし、中岳に近づくにつれて降灰が徐々にひどくなり、フードをかぶってサングラスをしても灰が目の中に容赦なく入ってくる。
しばらく目の痛さを我慢して進んでいたが、とても目を開けていられなくなったので途中で断念した。健康を害してまで行く価値はない。
もし中岳まで行ったとしても噴煙が激しく火口を覗き見ることはできないだろうし、その先には進めず結局引き返すしかない。




ザックの表面には風で飛ばされてきた火山灰が結晶化してこびりついている。バラバラと降ってきているのは、ゴマ粒から米粒ほどの大きさの灰だ。
その火山灰の粒子の影響で、頻繁に開閉しているカメラケースのジッパーが動かなくなった。
そこでカメラを上着のポケットに移したが、今度はそのポケットのジッパーも硬くなってきた。
下山したあとに灰を洗い流せば元通り動くようになったが、登山中はどうすることもできない。




高岳に戻り、少し上空に青空が見られるようになったが、全体が晴れ渡るほどには至らず。
コンビニで買ったパンを食べようとしたが、冷たく固くなっており、とてもまずくて食べれない。一度口にしたが戻してしまった。
登ってきた仙酔尾根を再び下ることにする。




仙酔尾根の下りは、アイゼンが利いていて思った以上に安定して下れた。下から登ってくる3~4人とすれ違った。
少し下れば陽が差してきたため昼食休憩することにしたが、ここでも灰が飛び交っていてザックにも食糧にも紛れ込み、最悪だった。
食器、水筒、カメラ、携帯電話、GPSなど、プラスチックや金属のいたる表面に、灰の粒子が擦れて無数の傷がついてしまった。




振り返るとすっかり晴れていて、中岳の火口から東に向けて噴煙が延々と流れていた。
この日の降灰情報によると、西の風・風速13メートル、噴煙の高さ500mだったらしい。

13時40分、「かんぽの宿」に戻る。全身の服とザックの中の灰を落とし、浴室で灰に汚れた持ち物全てを洗い流した。
それでも粒子が細かすぎてなかなか取れず、結局自宅のフローリングにもぶちまけるハメになった。
ふもとの町では灰をかぶった車も結構見かけたし、火山灰が風に運ばれて目に入ってくるしで、生活している人は大変だろう。それとも慣れてしまってあまり気にしないのだろうか。

個人的には不快指数の高い登山だった。もう行くことはないだろうが、行くなら噴火警戒レベルが1に下がってからにすべきだろう。

おわり

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