■愛宕山 MTB          ■自転車旅行記へ

●2007年6月2日

先週、買ったばかりのMTBで山道を走っていたら偶然、貴船山という山に到達した。自転車でも山頂まで行けるということを発見してしまったのだ!

というわけで、今度は愛宕山に登ってみることにした。メインの表参道は人が多そうなので下りに利用し、登りは梨木大神~サカサマ峠というコースが人が少なそうなので行くことにした。

清滝から梨木大神までは長い林道だ。車1台がやっと通れるくらいの道幅で、舗装路から荒れた簡易舗装やダートへ変わる。基本的に乗車可能だが、乗れるだけあって距離は稼げても標高は350mまでしか稼げない。梨木大神は神社かと思いきや、「梨木大神」と彫ってある小さな石が立っているだけの分岐点だった。この先から首無地蔵のあるサカサマ峠(標高705m)までは、急な坂道の連続となる。


梨木大神の分岐


サカサマ峠を目指して渓流沿いに自転車を押していると、突如、目の前が開けて無残な景色に変わった。梨木谷を取り囲む山の斜面一帯の木々が伐採されており、谷間の道は倒木で完全に塞がっている。それでも踏み跡が少し残っているので、何とか行ける所まで行くつもりで、自転車を担いで散乱する枝の上を歩き続けた。


林道の終点。その先は…

しばらくは左手に道がついていたが…

  伐採された斜面を歩くはめになった。
今考えると明らかな道の誤りである。

そのうち、自転車は枝に絡まり、足元の枝も撓んできて、蜘蛛の巣の上を這うような状態になり、一歩踏み出すにも一分以上かかるようになった。何とか山の斜面に到達してからも、足元は腐葉土でずるずる滑り、やむなく自転車をその辺に倒して、両手両足で自分の体を這い上がらせてから、自転車を引きずりあげるといったことを繰り返した。そんな努力も空しく、完全に次の一歩を踏み出す場所すらなくなり、引き返すことを余儀なくされた。すでに手足は枝に引っ掛かって傷だらけ、掌は樹液と泥だらけ、顔と脚は蛭に血を吸われていた。蛭は毒を持っていないと思っていたが、雑菌が入ったためか、翌日になって吸われた箇所が大きく腫れ上がっていた。あとになって冷静に考えると、どうやら道を間違えていたようだ。

しなる枝の上に乗りながら、こんな所をむりやり越えて…

ここでついに断念し、引き返した。

 
結局、2時間近くを無駄にして、標高500mの地点から標高180mの月輪寺登り口まで下ってきた。別ルートとして、この登り口から裏参道と呼ばれる道を通って山頂まで行くことにした。こちらなら問題ないだろう。

裏参道はさっきとはうってかわり、石段で整備された登山道なので自転車を担いで上がることができた。自転車をひきずり上げなくても、担ぐだけで済む、ということに喜びを感じながら、階段を上っていった。裏参道という名の通り下山する人とも多くすれ違い、ある人からは「山頂まで行く気ですか。この道は険しいから、自転車は置いていった方がいいんじゃないか。」と半ば呆れ気味に言われたが、「いえ、余裕です。」と答えて順調に進んでいった。やがて、水分補給しようとボトルを傾けてみると水が出ない。しまった、登り口で川の水でも汲んでおけばよかった、と思ったが後の祭り。寺まで行けば水場があるかもしれないと思って、とにかく標高550mの月輪寺を目指して歩いたが、この間に完全に喉の渇きでバテてしまった。ようやく寺についたが、水が飲めそうな場所はどこにもない。寺の尼さんから声をかけられたので、水でも飲ましてくれるのかと期待して振り返ると、「すみませんが、みんなで一所懸命作った道なんで、マウンテンバイクは云々・・・」。どうやらここでは期待できそうもない。あきらめて先を急いだ。

寺を過ぎてからは、しばらく平坦な道も現れるが、乗車せずに押していくことにした。その後も階段の道が続く。下山中の人の反応は、驚く人が半分、呆れる人(又は無関心)が半分である。なかには、「頑張って下さい」と言って飴をくれる人もいた。本当は水が欲しいのだが、相手は下山中とはいえ、さすがにそんなことは言えない。京都市街の展望が開ける場所までくれば、もうすぐだ。標高860mの最後の分岐まで来れば、やっと道はフラットになり、神社のある場所まで乗車して行ける。最後の標高差50mは、自転車を担いで神社の石段を登って行った。境内に入っても水のことしか頭になかったが、どうやらここにも売ってなさそうだ。ともあれ、ようやく標高924mの山頂に到達。本当のピークは神社の西側にあるのだが、立入禁止のロープが厳重に張られ、「人間はそこまでして山の中に入るのか」みたいなことを活字で書いた看板があり、かなり興醒め。参詣が目的ではないのでそのまま石段を下りた。石段の下は広場になっており展望が開けた休憩所もある。その近くで自販機を発見。ペットボトル1本300円であるが、もっと高くても仕方ないと思っていたので2本買って1本を飲み干し、1本をボトルに詰めて、やっと生き返った気がした。

愛宕山頂

 
下山はどのルートを通って帰るかは悩んだが、結局、表参道を通って帰ることにした。裏参道よりは緩やかながらも、階段の道が延々と続く。道沿いには一丁ごとに地蔵が立てられている。この道を通って下山する人も多い。乗車できるところはごく僅かに限られているが、ライディングテクニックを身につけるべく、少々の階段や段差はなるべく乗車することにした。当然、ハイカー優先なので、すれ違う時には自転車から降りる。そこそこの段差でも速度が出ている時には安定しているが、速度を落とせば不安定になる。快調に段差を降りている途中、前方にハイカーが見えたので速度を歩行程度に落とした途端、足元をとられてコケてしまった。SPDもこういう咄嗟の時には外れてくれない。自転車ともども硬い岩の上に叩き付けられて、激痛と共に脚が傷だらけになった。前を歩いていた人達も振り返って不思議そうに見ている。前回の転倒と同じくビンディングでなければこけなかった筈だが、これを機に、ペダルのバネは最弱にすることにした(ペダルを購入してすぐにテンションを上げていた)。二合目辺りには、左手に愛宕山鉄道鋼索線の遺構が見える。駅舎の建物が崩れないうちに、いつかはこのルートを辿って行きたい(3箇所のトンネルは内部が崩壊しており、愛宕山登頂の最難関ルートと言われる)。それから先に「お助け水」と呼ばれる水場があるが、ここまで来ればもう助けは不要で、あっという間に清滝に着いた。

行きは愛宕山鉄道の遺構である「清滝トンネル」を通ってきたが、帰りは峠を一個ゲットするためにトンネルの上を行く試峠を通った。小さな峠だがそこそこ急で、峠には下向きのカーブミラーが設置されている。清滝トンネルほどではないが、ここも異様な雰囲気を放っていた。


試峠(こころみとうげ)

 
終わり

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