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2010年2月14日(晴れ)

JR木之本駅から余呉バスに乗り換える。例によって乗客は自分一人。目的地の椿坂峠にはバスは停まらず、峠からずいぶん離れた前後の集落にしかバス停がない。終点の中河内の方が峠からの標高差が少ないので、ここで降りる。

この一週間でかなりの積雪が融けたものの、中河内での雪の量は余呉駅周辺と比べても格段に多い。道路わきには背丈を超える高さの雪の壁が出来ている。中河内から椿坂峠まで標高差100mを登り返す。ところどころ凍結しているが、何とかスパイクタイヤでなくても走れる。

15分ほどで椿坂峠に着く。峠には相変わらず雪の壁ができているが、幸いにも峠から少し下ったところに取り付いた跡がある。おそらく、一週前に大黒山に向かった集団のものだ。そのままだとさすがに沈むので、スノーシューを装着する。

8:35 椿坂峠

9:24 樹氷

最初から急登で始まるが、雪が氷のように固くなっているため、労せずにスイスイと登っていける。雪の下はおそらく相当薮っぽい尾根だが、積雪のおかげでアスファルトみたいになっているので、木の枝をヒョイヒョイと交わしながら難なくクリア。これまでの数週間、雪に埋もれながら悪戦苦闘していたのが嘘みたいだ。今まで雪は障害でしかなかったが、今日に限っては初めて雪の恩恵を受けた気がした。

やがてブナの自然林になる。全ての枝が透明な氷の樹氷をまとっていて、それが太陽光に透かされてブナ林一帯が宝石のように光り輝く。今まで見たことのない光景だ。標高720mまで上がってくると、一気に展望が広がる。琵琶湖と敦賀湾、その間の野坂山地が白い峰々を連ねており、標高800m余りの山域であることを忘れさせる。その後は勾配が緩やかになり、あっという間に山頂へ辿り着いた。時間はまだ10時。

9:32 標高720mより

9: 48 ブナ林

山頂はブナに囲まれ展望はないが、落ち着いたくつろげるスペースなので、樹氷に囲まれながら早めの昼食とする。

下山路は、採石場への周回コースを選択する。スノーシューを外し、山頂から南に延びる尾根を乗車して下る。あまりにも調子が良すぎて、尾根を右に折れる所を直進してしまい、自転車を担いで戻る。やがて気温が上がってきたせいか雪が柔らかくなってきて、前輪が突然ズボっと沈んで前転して転ぶようになる。4、5回転倒を繰り返したのち、乗車するのをやめて歩く。

10:39 尾根を下る

10:52 大黒山を振り返る

標高800mまで降りてくると、開けた尾根になる。東側に、上谷山、三周ヶ岳、三国岳、左千方などの千二百メートル級の薮山が、ひときわ白く存在感を示している。この時期においては誰も近寄ることのない山域だ。一方、明らかに雪がゆるみ出して歩きにくくなってきたので、再度スノーシューを装着する。

11:28 左:上谷山(1197)、中央:三周ヶ岳(1292)、右:三国岳(1209)

その後も進む方向を確認しながら、尾根伝いに下りつづける。正午過ぎには、標高500メートル付近まで一気に下ってきた。ここまでは本当に順調だった。

問題はその先、尾根がはっきりしなくなってきて、採石場へ降りる方向よりも左側へ突き出た尾根へと進んでいってしまったことだ。鉄塔のあるあたりでおかしいと気付いたが、融けて柔らかくなった雪の急坂を登り返すのは、とても気の進まないものだった。後ろを振り返ってしばらく悩んだが、そのまま進み続けることにした。地図を見ると、明らかにこちらの尾根の方が緩やかに下っていけそうなのだ。

ところが尾根は徐々に痩せてきて急になる。スノーシューでは無理な角度になってきたので外すが安定せず、滑るように降りていく。

やがて尾根の末端まで来て完全に行き詰まった。もう目の前に採石場とその間の谷が見えていて、直線距離で50メートルほどもないが、滑落してしまいそうな斜面で全く足が出せない。うまく谷へ降りられても、そこから先の谷筋も雪で埋もれていて危険な様子だった。ここまで来てしまって無念だが、引き返すことに。

12:25 ここで引き返し

13:35 採石場から谷沿い

案の定、滑るように降りてきた尾根なので、登り返そうとしても一歩も前に進められない。足をいくら深く踏み込んでも、足元の雪を掻き乱すだけで空しく終わる。

やっとの思いで、元の位置まで戻ってくる。そこから軌道をとり直し、採石場の方めがけて斜面を直降する。こちらも徐々に急になり、危険な状態になって足が止まる。スノーシューのグリップでは限界があり、アイゼンも持参すべきであった。他に勾配のゆるやかなルートもなさそうなので、できるだけスノーシューのエッジを効かせて、滑らないように恐る恐る慎重に下る。何度か足を滑らせてしまうが、樹木に受け止められる。

疲労困憊の状態で谷へ降りてくるが、そこから先にあるはずの林道も雪に隠れて、どこを歩けばいいのか分からなかった。谷へ向かってV字に切れこむ雪の斜面を、やはりグリップのきかないスノーシューで恐る恐るトラバースしながら進む。やがて国道が見えてきた。

今回は労力の90%以上を最後の下りに費やしてしまった。滑落遭難について身近に感じさせられる体験となった。

カシミール3D及びGPSトラックデータにより作成

【中河内(8:20)〜椿坂峠(8:35/8:50)〜大黒山(10:07/10:35)〜p753(11:10)〜p781(11:35)〜道間違い(12:06/12:53)〜採石場(13:40)〜国道(13:47)】

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