■銀杏峯・部子山 MTB          ■自転車旅行記へ

2010年4月18日(晴)

電車やバスでのアプローチが不便な山の場合、必然的にマイカー登山となり同じ場所へ下山してこなければならないが、自転車登山の場合はそんなことを気にせず全く反対のルートを選んで下山できることが最大のメリットである。今回は、大野から出発して銀杏峯〜部子山を縦走し、山の反対側を下って鯖江に抜けるという贅沢なプランを用意した。

越前大野駅の近くの民宿で前夜泊し、朝の6時に出発。濃霧の中、10kmほど走ると林道の始点となる宝慶寺に着く。続く林道も状態の良い舗装路で、前方を白い峰々に囲まれながら快適に高度を稼ぐ。途中で残雪が現れ、車だと途中までしか上がれないが、この日はすれ違う車も林道上に駐車してある車もなかった。

標高750mで尾根に沿っていく登山口が現れるが、林道がさらに延びていたので、登山道には入らずに林道を進み続ける。林道は大きく東へ迂回しながら登山道の尾根から大きく離れるが、歩きにくい残雪や倒木の悪路が続く。標高850mで再び尾根からの登山道と合流するが、明らかに登山道を行くのに比べて時間と労力をロスしてしまった。

7:38 林道途中からの眺め良し

7:57 林道標高800m付近

この位の標高だと、山の斜面の雪はほとんど融けていて、林道上にのみ多量の雪が残っている。この標高850mからの取り付きは登山道が急で、しかも雪に埋もれていたために、なかなか見つけることが出来なかった。尾根上はところどころ雪の混じった急坂の道が続くが、トレースが皆無で足掛かりもなく、さらに雪が氷のように固くなって滑ってしまい、軽アイゼンでも持ってくればよかったと感じた。

20分ほど急坂を登れば少し傾斜が緩くなり、雪が一面に積もってきたのでスノーシューを装着する。こういう場面での登攀力はスノーシューが最も優れ、スイスイ登っていける。ところが、標高1200mを過ぎるとかなりの急坂となり、雪が落ちて岩や木の根が現れると厄介だ。ラケットを履いているようなものなので歩きにくくて仕方ない。雪が積もっている所でも、氷の様に固い急斜面の上ではグリップ不足であり、やはりアイゼンが必要と感じた。

急坂は標高1400mまで続く。かろうじてスノーシューでも登ってこれたが、反対方向(下り)だったら、アイゼンなしではとても無理っぽい。こんな所を無理に下らざるを得ない状況になってしまったらと考えると、寒気が走る。

8:13 標高850m登山口(右上が登山道)

9:33 かなりの急坂

標高が上がるにつれ、いつもとは逆に雪が柔らかくなってきた。ここ数日に降った新雪が積もっているようだ。傾斜がゆるやかになり稜線に上がると、雪原のように開けた場所にでる。獣の足跡が続いていると思ってよく見ると、今日初めて見る人間の足跡だ。この足跡に沿って灌木の隙間に延びる道を辿っていくと、祠の立つ銀杏峯山頂に出た。

山頂には誰もいなかった。展望は、圧倒的な白さと大きさを誇る白山、能郷白山はじめ奥美濃の山が延々と連なっており、期待していた以上だった。祠の近くには雪に埋もれた三角点も見つかった。

10:09 稜線へ出ると平らになる

10:22 銀杏峯山頂より奥美濃の山々

再びもとの雪原まで戻る。足跡は、銀杏峯から部子山へ向かって延びているようで、どうやら部子山側を起点に往復してきたのだろう。10〜12本爪アイゼンの足跡である。やはりアイゼンで来るべきだったようだ。この足跡を追いながら、前方に見える部子山への縦走を開始。両方の山を結ぶ登山道はなく、積雪の十分にある時期でなければ縦走はほぼ不可能である。

縦走路は藪を避けながら進んでいかなければならず、踏み跡がなければかなり迷うだろう。深い笹藪も雪の下敷きになっていて地面に伏すように倒れているので、スノーシューを履いたままでも笹藪の上を何とか歩くことができる。いくつかのコブを越え、1時間以上かけて最低鞍部までやってきた。

10:39 部子山への縦走開始

10:51 障害となる笹藪は雪の下

部子山へは、鞍部から標高差200mを登り返す。近くで見ると、ボリュームを感じさせる山だ。急坂を登り始める。山腹から振り返ると、縦走路から銀杏峯までがよく見通せる。途中で足跡が左右二手に分かれた。藪の少なそうなところを行く右側の踏み跡を追っていったが、ありえないほどの急斜面をトラバースしていき、アイゼンの足跡をスノーシューで辿るのは不可能になった。急斜面の途中でスノーシューを外すこともできず、MTBをピッケル代わりに斜面に叩き込み、足元の雪を削って一歩一歩足場を作りながら進んだ。わずか十数メートルほどの間だったが、恐怖体験だった。

11:21 間近で見る部子山 11:56 縦走路を振り返る

頂上直下は、わずかの区間だが灌木の枝が密にはびこっていて、自転車を振り回しながらもがいても一歩も前に出られず。仕方なく自転車をそこに放置して、山頂にスノーシューとザックを預け、再び自転車を取りに戻る。

鞍部から1時間後、部子山山頂。山頂に3人のグループがいて、部子山の林道を車で入れる所から6kmほど歩いてきたと聞いて安心。トレースのない林道も場合によっては大変危険な状態になるからだ。山頂の西にある小屋の軒下で昼食を終えてから、再びスノーシューを装着して林道を下りにかかる。雪で完全に埋まっているので、足跡がなければどこに道があるのかさっぱり分からない。

12:28 部子山の山頂西側は開けた台地

13:08 雪に埋もれた林道を下る

それでも予想通り、標高1100m辺りから雪がところどころ融け出し、徐々に乗車できる区間も長くなってきた。雪が斜めに積もっている所では、滑落しないように慎重にバランスを取りながらMTBを担がなければならないが、平らに積もっている所では雪上を乗車したまま下れるので何とも爽快だ。

標高1000m以下のところで、雪が部分的に残っている林道をくねくねと進むよりも、全く雪のない登山道を一気に下った方が早いのではないかと考えて、林道から地形図の点線で示される尾根の道を行くことに決めた。少々木の枝が覆いかぶさってくるのが邪魔だが、何とか突っぱねて乗車していける。なかなか楽しそうな道だと思った。

13:59 急斜面の雪面を横切る 14:31 楽しそうな尾根??

ところが道は徐々に藪っぽくなる。これはとんだ失敗だったと思いながら、引き返すよりは強引に下った方がましだと考えて先に進む。p873のところで完全に踏み跡が消えた。そこから先は執拗な藪に捕まり、全く方向を見失った。

藪に引っかかりながら樹林の中を彷徨っていると、やがて地籍境界の杭が見えた。これを追っていこうとするが、まっすぐ進むこともままならない。完全に廃道だったようだ。最後は壮絶な笹藪になり、手にすり傷を受けながら強引に林道へ脱出。気がつけば、ハンドルに固定していた自転車のライトが消えていた。知らない間に、藪に奪われてしまったようだ。

14:57 激藪!! 15:19 何とか脱出

一旦、林道には出たものの、三角点を踏むため、少し先の所で再び山道へ入る。こちらの道は、三角点があるためにそれほど荒れてはいない。三角点を踏んでから更にまっすぐ進めば、すぐに林道へ戻ってこれた。そこから先の林道は、雪は全て融けている快適な舗装路。池田町から鯖江へ抜ける道も新しいトンネルが出来ていて、ほとんど登り返すことなく鯖江駅まで走れた。

カシミール3D及びGPSトラックデータにより作成

【越前大野(6:10)〜宝慶寺(7:00/7:10)〜標高850m登山口(8:15)〜銀杏峯(10:15/10:20)〜最低鞍部(11:27)〜部子山(12:25)〜林道終点(12:35/12:55)〜林道を離れる(14:27)〜林道へ戻る(15:20)〜p776(15:30)〜r175(15:43)〜鯖江駅(17:00)】

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