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黄色は車道、は山道を示す


●2016年5月6日


今年のGWは、八甲田山への自転車登山を試みた。GW中の登山記録は少なく、自転車で登れるのかどうか今一つよく分からないまま出発することになった。装備は、基本的な冬山装備(12本爪アイゼン、ピッケル、スパイクタイヤ…etc)である。

飛行機で青森空港へ行き、城ヶ倉温泉のホテルに前夜泊する。予報では長らく雨であったが、見事に外れて翌朝は晴れとなる。しかし午後から天気が崩れるかもしれないので、かなり早めの5時過ぎに出発することにした。2キロほど国道を上り、登山口の酸ヶ湯温泉に到着。硫黄の臭いが立ち込めている。




この通り、登山口でも融雪はかなり進んでいる。ここでアイゼンを装着して自転車を押して入っていく。入山者はほぼ皆無で、残雪期の雪でもあるので追っていけるようなトレースは全くなかった。GW前半ならまだ雪も多く、山スキーなどの入山者が数名いただろう。





一定間隔で樹木の上に掲げられた山スキー用の丸い標識があり、これとGPSを頼りに方向を見定めて進む。しばらくすると日が差してきた。日が当たっている所は暑いだけでなく、雪が柔らかくなっていて歩きづらい。なるべく日影を選んで歩くようにする。





目印にしていた丸標識を見かけなくなり、どちらへ進めばいいか少し悩んだが、とりあえずGPSを見ながら夏道のある方向へと進んで行くことにする。

標高1200m付近で夏道は沢の方へ降りて行くようになっているが、その部分がトラバースになっていて残雪期の今では完全に雪の下で全く通れない。最初から沢に沿って進むべきだったと気付いたが、気付くのが遅すぎたようだ。右手の沢とはすでに高さ30mほどの崖で隔てられており、戻る場合はふりだし近くまで戻らなければならないかもしれない。

とりあえず行ける所まで行ってみることにする。右手の沢とは反対の、左手の斜面を登っていく。





足を滑らせると谷めがけて滑落してしまうので、慎重に斜面を越えて行く。振り返るとなかなかの高度感。





その後、雪の上に現れているヤブを伝いながら、雪の崖を恐る恐る谷へ向けて降りてきた。無事成功。道さえ誤らなければ済むわけだが、今回一番難しかった所である。まあ、自転車さえなければ尻セードで簡単に滑り降りれるのかもしれないが。





だんだん暑くなってきて、雪が柔らかくなってきた。雪の下には沢が流れていて、何度も踏み抜いてしまう。





自転車を押しただけでも穴が開いて、奥から勢いよく水の流れる音がする。夏道が沢に沿ってあるはずだが、どこにあるのか分からない。何の前触れもなくいきなり踏み抜いてしまい、靴の中まで浸水した。





出発してから2時間半後の7時45分、沢を登り詰め、大岳と硫黄岳の間の鞍部に到着する。風がやや強い。ここから大岳を見上げると、山の西側半分は雪が融けていて夏道が完全に出ている。東側半分は雪の急斜面で、はっきり言って自転車を担いで登れる自信はあまりない。融雪がここまで進んでしまっているのは少し残念であるが、技術的にはかなり楽になるだろう。





大岳に登る前に、反対方向を少し入った所にある仙人岱ヒュッテに立ち寄ってみるが、鍵がかかっていて閉鎖中だった。





大岳に登り出した時にはすでに曇り始めていた。しばらく雪の斜面を行くが、風が強くアイゼンを履いた足が重い。十歩も行かずに息が上がる…。





ようやく夏道に出た。アイゼンを外すと足が急に軽やかになった。ただし風は依然として強いし、なんだか歩きにくい道だ。





出発から4時間後の9時15分、八甲田山の最高峰、大岳(1584m)山頂。百名山自転車登頂51座目。ようやく折り返しに入る。誰もいない淋しい山頂。雪も全て融けてしまっていて味気ない。ここまで誰にも会っていない。

帰りは、往路を戻る予定でいたが、反対側を見渡すと、ロープウェイの山頂駅がすぐ近くにあるように見える。稜線上の雪も少なく、せっかくなのでロープウェイ山頂駅まで縦走してみようかと思いつき、北方向へ下って行くことにした。





避難小屋までの下りも途中までは夏道を辿っていけたが、後半は雪の急斜面になる。アイゼンを再装着するのが面倒だったので、そのままキックステップで避難小屋めがけて下って行く。こちらの避難小屋も鍵がかかっていて閉鎖中だった。

つづく井戸岳への登り返しは、上の写真の通り夏道が下から出ていたので楽勝かと思っていたが、やはり風が強く自転車ごとあおられた。





10時過ぎ、縦走路上にある井戸岳に到着。山頂部一帯は大きな噴火口になっている。噴火口の外側にはこれに沿って半周する柵とロープで仕切られた水平な道がつけられていた。





続く赤倉岳からの下り。縦走路の北側は断崖になっていて雪が多く積もっている上に、ところどころ雪崩れている。赤倉岳山頂にあった説明書きによると、この断崖は火山爆発の跡であり、急激に爆発したために山腹まで吹き飛んでしまったものだということだ。断崖の上をいく縦走路は雪が融けていて夏道が出ていて、難なく通過できた。





赤倉岳の下り途中から再び雪に覆われて、最後まで続く。アイゼンは着けないままでも大丈夫だ。天気が少し下り坂になってきているので急ぎ足で歩く。




田茂萢湿原から越えてきた三山を振り返る。左より、赤倉岳(1541m)、井戸岳(1537)、大岳(1584)。

ここで初めて、人の姿を見た。ロープウェイ乗り場付近は、GW連休中なのでもっと人が多いと思っていたが、数人の人が山頂付近を散策しているのを見かけただけだった。どうやら八甲田スキー場も営業終了したばかりで、スキーシーズンを過ぎたのが原因らしい。連休の初めの頃は雪も多かったようだ。

ちなみに約1週間前(2016年4月30日)の写真がこちら↓(八甲田ロープウェーのホームページより)



わずか1週間足らずの短い期間で、かなり雪が融け進んでいるのが分かる。景色を楽しむならGW前半、ただし難易度は格段に上がっていただろう(縦走はムリだったかも)。今回の登山で、アイゼンは大岳の登りの途中までしか使わなかったし、持参したピッケルやゴーグルは全く使わなかった。

11時半に田茂萢岳のロープウェイ乗り場に到着。山頂駅にあるレストランで昼食休憩をする。休憩している途中で雨が降ってきた。





ロープウェイは100人乗りで(実際に乗っているのは5名ほどだったが)、そのまま自転車を乗せることが可能だった。ロープウェイに乗って山麓駅に着くと大雨が降ってきた。そのまま翌日も荒れた天気となりロープウェイは運行中止、前日も強風のため運行中止していたので、非常に運が良かったと言えよう。もしロープウェイが運行していなければ、ここまで縦走しても降りる道が分からない(夏道もない)ので途方に暮れていただろう。

山麓駅で自転車を輪行し、ホテルの車を呼んで城ヶ倉温泉へ戻る。自転車で実際に走ったのは、結局行きの登山口までの国道2キロだけである。折角MTBを持って行っているのだから、またいつか雪上走行もしてみたい(今回は雪質が悪くて100%無理だった)。


おわり

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