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●2008年12月28日

静岡駅からワイドビューふじかわに乗り、右手に富士山、左手に十枚山から笊ヶ岳までの南アルプス支脈を眺めながら甲府駅に着く。ここから夜叉神トンネル東側の登山口まで、標高差約1100m。好天の中、スパイクタイヤが空しくジャリジャリと音を立てる。前傾姿勢に重いザックがのしかかり背骨が悲鳴を上げるが、時間に余裕がないので水分も全く補給せず休憩なしという無茶な走り、それでも登山口まで4時間もかかった。

例年に比べて雪が少ないようで、ここまで積雪や凍結した所はなく、登山口には車が十台前後停まっていて売店は閉まっている。ここから夜叉神峠までの登山道は、標高差約400m、うっすらと雪が積もっているが幅が広く歩きやすい道で、反対側から来れば楽勝で乗車して下れる道。

目指す鳳凰山 見る限り雪はない 夜叉神峠登山口 標高1380m

16時10分、目的地の夜叉神峠。目の前に突然現れる白峰三山。白銀の北岳、間ノ岳、農鳥岳が等間隔に聳えている。これを見て引き返してもいいくらい、ここへ来るだけでも価値がある。

初日は予約していた夜叉神峠小屋に素泊まり。他には、池山吊尾根を経て北岳までを往復するというテント泊の青年一名のみ。この日の日中は、下界からだと全く想像できないが山では烈風が吹き荒れていたらしく、鳳凰の稜線を行くにもザイルを使用する人もいたとか。自分はザイルどころかピッケルすら持参してなかったが、29、30日は冬型が一時的に弱まるので心配要らないと小屋の主人が言っていたので一安心。

夜叉神峠 夜叉神峠小屋

●2008年12月29日

夜間は風が強く、思わず小屋の外に停めてあった自転車を寝室へ持ち込んだが、夜が明けるとすっかり風は止んで晴天が広がっている。朝食は取らず7時過ぎに小屋を出発。夜叉神峠からは樹林帯の長い上り坂が続くが、左手には時折、木々の間から白峰三山が垣間見える。9時15分、400mの標高を稼いだのち杖立峠に着いてようやく休憩。ここは見通しのない樹林帯の小ピークだが、ここから先は道が凍結しておりかなり危険のためアイゼンを装着。

山火事跡辺りから雪は深くなり、トレースはしっかりついているものの、車輪は雪に埋まる状態なので、状況に応じて押したり持ち上げたり担いだりと忙しい。また、アイゼンの爪で高価なスパイクタイヤを踏んでしまわないようにも注意する。甲府盆地から見える鳳凰山は雪の様子など全くなく緑々としていたが、実際にはこれだけの積雪が樹林の下に埋まっているということだ。

樹林帯の路を行く 山火事跡から白峰三山 積雪は少ない

さらに350m高度を上げて11時半に苺平を過ぎ、長く続いてきた上り坂がひとまず終わる。12時15分に南御室小屋到着。時間は十分にあるので、南御室小屋での予約をキャンセルしてこの先の薬師岳小屋に振り替えてもらったが、薬師岳小屋には水場がないため食事の用意が難しく、素泊まりという条件になった。

小屋の外にあるベンチでカップ麺を作り昼食休憩。ここで別の登山客と会話していたが、話を進めていくうちに、去年の夏に塩見岳山頂でも会っていたことが判明、偶然の再会となった。山頂で一緒に写真などを撮ったりしたので自分もその人のことはよく覚えている。自転車山行をしていると変に目立ってしまうのは仕方ないと諦めているけれど、たまにはこういうメリットもある。

南御室小屋より先は雪はより深く急登となるが、標高2650mほどで森林限界となり遠望が開け、花崗岩の岩稜に出る。前方に薬師岳の他、仙丈ケ岳、アサヨ峰、振り返れば富士山も姿を現す。14時40分、薬師岳直下の鞍部にある薬師岳小屋(標高2720m)へ到着。宿泊者は7名。2日連続の素泊まりだが、こういう時のために余分に持参した食糧で自炊。

森林限界に出る 薬師岳小屋

●2008年12月30日

ほとんどの宿泊者は、山岳写真を撮るために日の出時刻までに観音岳に辿り着くよう5時半頃に小屋を出たようだ。6時になって小屋を発とうとしたが、ここは山頂に近い場所であるため強風が吹き荒れていて寒さに震えが止まらず、ダウンジャケットを持参していない自分は断念した。そして6時20分、空は十分明るくなり、風も少しは弱くなったので出発を決めた。

上半身は普段は冬場でも行動中は二枚なのだが、この時ばかりはアウター・ミッド・インナーと三枚を重ね着し、頭部も帽子・ゴーグルの上にフードを被り、手袋もオーバーを重ねるという持参してきたもののフル装備でやっと凌げるくらい。

幸い夜間に降雪はなく、雪の表面は良く締まっていて歩きやすい。周囲を見回しても雲ひとつ無く、予定通り天候の心配は要らない。風こそ強いが、時期と場所を考えるとこれでも穏やかな方だ。ただ、自転車を担ぎ上げる瞬間は、体が下から浮くような感じで吹き飛ばされそうになる。担いでいる間も、バランスをとりながら一歩一歩前に出る。

6時50分、薬師岳山頂。タイミング良く、ここで日の出を迎える。写真撮影しているカメラマンが一人。モルゲンロートに染まる北岳が印象的。

アイゼンを軋ませながら7時40分、鳳凰三山の最高峰である観音岳(標高2840m)に立つ。山頂の岩に攀じ登って北西を眺めると、地蔵岳からアサヨ峰までの稜線、そして仙丈ケ岳、甲斐駒ヶ岳が迫って見える。

薬師岳から眺める北岳 観音岳から眺める仙丈ケ岳

続く岩稜を越えて9時半に、鳳凰三山の最後となる地蔵岳山頂のオベリスクの基部に辿り着く。塞ノ河原と呼ばれる白砂の斜面が広がっている場所である。そこには無数の地蔵が安置されている。ここから見上げるオベリスクは圧巻だ。よく晴れていて風も弱く、見渡す限り人の姿も皆無で、少し長居をする。

地蔵岳を過ぎてからのトレースは若干曖昧になる。稜線から外れ風が止んできたので、中間着や帽子、ゴーグル、オーバーグローブを外し、方向を見定めて雪の斜面を下っていく。再び樹林帯に突入し、10時25分、鳳凰小屋に着く。

塞ノ河原にて 鳳凰山のシンボル、オベリスク 地蔵岳の地蔵 後ろは甲斐駒ヶ岳

小屋には主人が一人、気分良くギターを弾き語りしていたが、朝食兼昼食のカップ麺を作るのに内部のスペースを貸してもらった。ついでに麓の御座石鉱泉に宿泊できるかどうか尋ねたところ、あんな所誰も泊まりやしねえから暗くなってから飛び込んでも大丈夫、ということだったが、念のため無線で予約を入れてもらうことにした。

小屋の近くで水を汲んで11時に出発。道は急坂の連続で凍結しているところが多く、凍結した雪の斜面地をトラバースする箇所もあるが、トレースもしっかりついていて身の危険を感じる所はない。標高1600m辺りから完全に雪が消えたのでアイゼンを外す。標高1350mで林道へ抜ける分岐へ入り、舗装路の林道を使って一気に御座石温泉まで下る。16時到着。

御座石鉱泉の宿泊者は他に1組の夫婦のみ。標高1117mに建つ鉄筋コンクリート3階の造りだが、外観も内部も寂れている。鳳凰小屋の主が言った通り、年末年始なのに余り流行ってない。おそらく、ここに宿泊するのは山ヤくらいで、温泉目的の家族連れが来ることはまずないだろうと予想させるくらいの簡素さ?であるが、意外にも食事はそこそこ手の込んだものが出てくる。熱い温泉に浸かり3日分の汗を流す。

鳳凰小屋のマスコット 御座石鉱泉

●4日目(2008年12月31日)

この日は帰るだけなので、朝食を終えても個室に戻ってゆっくりしていた。8時半過ぎに宿を出る。ダートの長い一本道を下りきり、韮崎から静岡方面に向けて気の赴くまま走る。身延線に沿って、一時は新富士或いは静岡駅まで目指したが、スパイクタイヤの抵抗が思った以上に大きく、何よりもピンが減るのがもったいないので、数時間に1本しかない電車のダイヤを見計らって、内船駅で走行を止める。走行距離は約80km。特急停車駅だが無人駅でもあるので、フォームにチャリをそのまま持ち込んで輪行した。こうして4日間のサイクリングを終えた。

御座石鉱泉からの下りのダート道 帰りの車窓から
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