■薊岳〜池木屋山縦走 MTB          ■自転車旅行記へ

2010年9月18日(晴)

体力温存のため近鉄榛原駅からバス輪行、終点の大又で降りる。バス停を少し戻ったところで林道が分岐しているので、ここから入る。300メートルほど坂道を登り、民家横に延びている山道を進む。ダブルトラックの道が30分続いた後、本格的な登山道に変わる。見上げる限り続いている杉の植林帯の中、MTBを担ぎ進む。

標高750mを稼ぎ、ようやく薊岳西側へ延びる尾根に取り付いた。大鏡池があると思われる場所に来たが、池はすぐには見つからず、道を外してあちこち探し回った末、小祠のある場所へと降りてくる。祠の隣には草で覆われた湿地のような場所があるが、どうやらこれが干上がった池なのだろう。

池の向こう側へ渡って踏み跡に合流。左手を進むと薊岳へ続くが、一旦右に進路を取り、大鏡山の三角点を往復する。大鏡山は展望もなくあまり人の入らない三角点で、ふくろうの絵が描かれた紀州わらじ会の山名板がぽつりと立っていた。

大鏡池を過ぎ、さらに東へと尾根を進む。杉の植林帯からブナの自然林へと変わる。まとわりつくハエを振り払い、右の写真のようなごつごつの岩場を乗り越えて、薊岳の山頂へとやってきた。一気に展望が広がり、台高山脈、大峰山脈の山々が見渡せる。残念ながら、逆光のためいい写真は撮れなかった。

再び自然林の中に入り、下り基調の尾根を乗車して進む。ほとんど乗車して行けたが、自転車を降りないといけない場面も多く、ほとんど時間短縮にはならなかった。

明神平へ到着。広々とした草原で、無人の小屋(あしび山荘)と東屋がある。歩いて5分くらいの所に水場もあり、テントを張るには好適地だ。あしび山荘の近くにテントを張ったが、他にも3組ほどの幕営者がいた。

テン場の真横を鹿の群れが悠々と通り過ぎる。人の姿を見ても全く逃げる様子がない。真夜中もテントの近くをうろうろしているらしく、鳴き声が頻繁に聞こえてきた。

【大又(11:15)〜大鏡山(13:30)〜薊岳(14:40/15:00)〜明神平(16:10)】

2010年9月19日(晴)

朝、テントを撤収し、水場で水を3Lまで汲んでから出発。そこまで水を使わないだろうと思いながらも、この先はずっと水場がないのでできる限り多く汲んでいかないと安心できない。荷物が12kg、自転車が13kgなので合わせて25kg。冬の小屋泊縦走よりも重く、これまでにない重装備のため結構きつい。

ブナ林のすがすがしい尾根を進み、不明瞭なピークの明神岳に到達。ここから左手に桧塚へ向かう道が分岐しているが、今回は立ち寄っている時間がない。いずれ桧塚へも行く積もりがあるので、その時には再びこのピークを踏むだろう。

次いで笹ヶ峰のピークを過ぎ、地形図で点線となっている(現在は廃道)瀬戸越へ下る途中、右手に薊岳が見えた。左の写真で、中央のとがったピークが薊岳だろうと思っていたが、地図をよく見てみると、中央は木ノ実矢塚(1373)であり、右奥のピークが薊岳(1406)であることが分かる。

なおもブナの美林に導かれ、千石山(奥ノ迷峰)へ来る。ここは三角点はあるが樹木に覆われていて展望はない。今回の縦走で、三角点があるのは大鏡山、千石山、池木屋山の三座のみである。

千石山を過ぎると、尾根はそのまま東へと延びているが、縦走路は強引に南へと振らないといけない。テープや標識があるので実際に迷うことはなさそうだが、そのまま進んでしまうとシャッポ山というピークにぶち当って行き止まりになってしまうようだ。

痩せ気味の尾根を通過し、赤倉山の登りに差しかかると写真のような好展望が広がる。残念ながら進行方向とは逆方向なので振り返らないと眺められない。

辿りついた赤倉山のピークは展望は無かったが、続く奥ノ平峰、霧降山(地形図には名前がない)では左手方向に展望が開けている。

そして明神平を出発してから5時間後、ようやく台高山脈の奥に潜む雄峰、池木屋山の山頂を踏んだ。明神平からここまでの縦走路は、思った以上に踏み跡がはっきりしていたので楽に来れた。3連休とはいえ、4、5人の人とすれ違っただけの静かな尾根歩きを楽しんだ。ハエが多かったので蚊取線香を持参すれば良かったかもしれない。池木屋山の山頂には、かなり多くの朽ちた山名板が散らばっていた。

これまでの快適な縦走路と違い、下りは全く気が抜けない。木の根がはびこる急な下り坂を下る。足の裏や膝への負担がなるべくいかないように、また、突然つまづいたりしないように、慎重に下る。

下り道は特に迷いやすいらしく、赤テープを見落とさないようにしながら下ると、やがて尾根道は終わり宮ノ谷(奥ノ出合)に出る。

そこから先は、ドッサリ滝、猫滝、高滝など滑落死亡事故が多発する危険地帯が続く。ドッサリ滝付近の踏み跡の狭いトラバースでは、右手の岩壁と自転車が干渉するため後ろ向きになって通過しようとしたが、徐々に岩がオーバーハング気味になってきて、しがみつく樹木もロープもなく、大変危険な思いをした。

高滝の高巻道も、簡易なロープこそ張られているものの、高低差100メートル近くの断崖絶壁に沿ってつけられている幅の狭い道で、枯れ葉が積もっていて滑りやすく、危険であることに変わりはない。なるべくロープには頼らずに下りたいが、掴める樹木なども少なく、結局、左手に握ったロープ一本で全体重を預けながら下降せざるを得ない場面も生じた。(自転車で行くことは決して勧められないルートである。)

長く続いた滝の高巻を終え、東屋のある風折谷出合に出てようやく緊張が解けた。コースタイム50分とあったが、自転車があるのが災いしたのか倍以上かかってしまい、疲労困憊の状態である。

風折谷出合から先は、写真のようにところどころ鉄製の桟道で整備された道が続いている。それでも、険しい谷沿いの道なのでアップダウンが激しく、なかなか標高を下げてくれない。


ガケの道で大きなカモシカと遭遇。至近距離になってもこちらを振り返ったまま動かないので、なぜ逃げないのかと思っていたが、どうやらガケの上で身動きがとれなくなっている様子だ。黙って通り過ぎようとすると、いきなり進路を180°変えて猛烈ないきおいで走り去っていった。わずか2〜3メートル横での出来事なので、こっちもビビってしまってバランスを崩し、危うく自転車を谷底へ落としてしまうところだった。

ようやく下山口である駐車場に着いた。9時間の長丁場であったが、充実感で一杯である。あとは舗装路をだらだらと走り、予約していた旅館で贅沢に過ごす。この日の行程は登山道15km、舗装路25kmであった。

【明神平(6:30)〜明神岳(7:00)〜笹ヶ峰(7:30/7:40)〜千石山(8:15/8:20)〜赤倉山(9:50/10:05)〜池木屋山(11:30/11:40)〜奥ノ出合(13:00)〜高滝上部(13:45)〜風折谷出合(14:45)〜宮ノ谷登山口駐車場(15:30)】



2010年9月20日(晴)

宿泊した『山林舎』から榛原駅まで自走して帰った。

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