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2011年3月19日(晴)

鈴鹿の槍だのマッターホルンだの形容される山で、その容姿ゆえに人気がある。険しい岩稜が続いているもののクサリなどで整備されていて、無積雪期に登るのはさして困難ではない。できれば南の鎌尾根とセットにして登りたかったが、人が多いのを避けるため積雪期の登山を優先し、鎌尾根は断念した。

鎌ヶ岳に限らず積雪期の鈴鹿主稜線上の山々に関して、三重県側からの登山記録は多くあるがアプローチの悪い滋賀県側からの記録はほとんどない。しかも今回のアプロ―チとなるのは、滋賀と三重とを結ぶ国道477号鈴鹿スカイラインであり、大規模な土砂災害がたて続けに発生している区間であるためもう何年もの間、通り抜けができない状態となっている。現在崩落しているのは三重県側との事なので、滋賀県側からアプローチするには支障なかった。問題は積雪状況である。

雪の多い年とはいえ、もう3月下旬。鈴鹿スカイライン上の雪はほとんど融けているだろうと予想していたのが見事に外れた。スカイライン入口の大河原集落では、ここ数日に降った雪が融けきっておらず、道路には10pほどの積雪が残っている。

大河原には冬期通行止のゲートが設置されているが、右写真のように道路の半分をふさいでいるだけなので、横をすり抜けた車の轍が続いている。轍の上を走行できるのは距離にして半分にも満たず、雪が融けきっていない部分は乗車困難なので押して歩いた。最初のゲートから7kmほど進むと、今度は完全に閉ざされたゲートが出現。車の轍もここで終わっていた。

結局、登山口がある武平トンネルまでの12kmのうち乗車できたのは3割程度で、特に2つ目のゲートを超えてからは100%バイクを押したり担いだりすることになった。

鈴鹿スカイライン上の積雪は平均して10〜20pほどだが、谷の南側は特に日当りが悪く、およそ40pもの積雪になりバイクを担ぎあげながら進む。連続して積雪量が多いわけではないので持参したワカンを装備するに至らず、壷足なので重労働になった。

道路上はトレースなど全くなく、鹿の死体が転がっているのみ。道路上にいた鹿やイノシシが慌てて逃げようとするが、雪が深くてよろめいており逃げにくそうだ。

最初のゲートのところから2時間半かけて、ようやく武平トンネルに到着(左写真)。このトンネルを抜ければ三重県であるが、トンネル手前の右手の斜面から取り付く。

登山道に入れば少しは積雪も減るかなと思っていたがそんなこともなく、深くて重い雪が足にまとわりつく。息を切らしながら急坂を登ると県境尾根に到達。ここで三重県側からの登山道と合流するが、相変わらず雪の上に人の足跡はなく、まだ誰も登っていなかった。

雪はおそらくこの2〜3日間に降ったもので、それ以来誰も歩いていない様子だ。県境尾根を鎌ヶ岳へ向けて南下するが、登山道は狭い上に岩などの起伏が多くてワカンでは役に立たず、壷足のまま進んだ。


単独ラッセルを続けて山頂手前の小鞍部まで来れば、見晴らしのきいた森林限界のような岩稜に一変する。ここからのルートは、雪と岩とザレ場が混在した状態で一気に山頂へ直登する。

雪が切れた場所では風化した花崗岩が足元を滑りやすくしていて、緊張を強いられる。鎖やロープはほとんど雪の下で、当てにならない。

左写真の大岩を通過する場所では、背丈を超えるような岩の上に厚い雪がかぶさっているため這い上がって着地するスペースもなく、おまけに鎖もロープもないため難儀した。右手にぶらさがっている小枝をつかみながら雪を徐々に切り崩して何とか乗り越えた。


最後は雪の急斜面を乗り越え、鎌ヶ岳の山頂へ到達した。山頂は、鋭鋒らしく狭い場所で展望に優れる。北は正面に御在所岳、左手に雨乞岳、その中間後方には広大な雪原を冠したイブネが見えている(下写真)。東には伊勢湾、南方面は鎌尾根を隔てて宮越山、入道ヶ岳、サクラグチ、能登ヶ峰、仙ヶ岳、野登山、高畑山、油日岳など、かなり遠方まで続いている。

山頂には、湯の山温泉から長石尾根を通ってやってきたと思われる足跡があった。岳峠から鎌尾根へと続く方面への足跡はなかった。トレースのある長石尾根ルートを辿っても三重県側へ降りてしまうため、休憩後は来た道を引き返す。


下りは登りに比して滑落の危険があるため、山頂でアイゼンを装着してから下った。先週の雪の急降下に比べれば(日記)、手掛かり足掛かりとなる岩があるので高度感は大して感じない。前回は6本爪の軽アイゼンに対し、今回は12本爪というのも大きな違いだ。

下りの途中で、これから登るという単独行者とすれ違った。三重県側のスカイラインは復旧工事中のため歩行者でも通れないらしく、湯の山温泉から雪の多い登山道を通って武平峠へ来たと言っていた。やはり、今年は極めて雪が多いらしい。

武平トンネルへ着く。この日は気温が高く、午前中に積もっていたスカイライン上の積雪がかなり融けていた。わずかに5〜10p程度残っている部分がほとんどで、加速度のついた自転車の下りではものともせず、95%以上は乗車したまま下っていけた。アイゼンは乾かす目的で装着したまま乗車した。やがて国道1号に合流。武平トンネルから45kmもの車道を走り、ようやく甲西駅に到着してからアイゼンを外した。

【大河原(8:40)〜武平トンネル(11:10)〜武平峠(11:25)〜鎌ヶ岳(12:50/13:25)〜武平トンネル(14:35/14:45)〜大河原(15:35)】

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