■カナ山 MTB          ■自転車旅行記(年度別)へ   ■自転車旅行記(地域別)へ

●2009年10月24日

懲りずにまた藪山へ行ってきた。この山はほとんど登山の対象になることのない山であり、地元の人も余り知らないかもしれない。地形図にその名はないが、江美国境の鳥越峠からほぼ南へ3km、ちょうど高山町・甲津原・曲谷の町境に位置する三等三角点九八五・八メートル峰のことである。際立ったピークではないが、この山は「夜叉ヶ妹池」という小さな池を湛えている。夜叉ヶ池と同じく、かつてはこの池で雨乞いが行われていたらしいが、多くのハイカーが訪れる伝説の夜叉ヶ池とは違って、薄暗い樹林に囲われ人知れずひっそりと佇んでいるという。


カシミール3Dを使用して作成

7時50分、長浜駅から出発する。鳥越林道の起点から二つ目の橋("しもたにばし"と書かれている)の手前右手に細い道が見える。「近江百山」で図示してあるカナ山への道は地形図にある道と同じであり登山口はこの辺りであるはずだが、本文中では榧谷(カヤ谷)と書かれている。榧谷橋が正しいとすれば、おそらく三つ目の橋のはずだ。一度は榧谷橋に向かって走り始めたが、あの細い道が正しいような気がして、また霜谷橋の所まで下ってきた。もともと道のない山だから、どちらから行ったにせよ大差ないだろう。

ところが、意外にもしっかりした踏み跡が続く。何度か踏み跡から逸れてしまう場面もあったが、方向の見当をつけて登り続けていけば、再び踏み跡へ戻れる。道は途中から植林帯の作業道となり、ジグザグの急登となるが、迷うことのない一本道で順調に進んでいける。このまま稜線まで行ってしまえるかも、などと甘いことを考えるも束の間、標高820m付近の少し開けた所でいきなり作業道は途絶え、その先はいくら探しても獣の通った跡すら見当たらなかった。

仕方なく、なるべく樹木のまばらな場所を選んで急斜面にとりつく。幹や枝が行く手を阻み、連続して五メートルも進めない。自転車が通るように枝をかきわけて進む。より尾根筋に近い左の方に踏み跡があるかもしれないと思って水平方向の移動もしてみたが、余計に深い樹林帯に突っ込んだ。道のない尾根にも打たれているはずの地籍調査用の赤杭ですら全く見かけなくなった。ここでかなり体力を消耗しつつ、45分あがき続けて稜線に到達する。

稜線に入ってからも一向に状況は良くならなかった。はっきりしない尾根、地面を這うように密生する潅木、稜線上とは思えない見通しの悪さ。獣道程度の踏み跡が尾根のやや西側についているが、その道を途中で見失い、より高い尾根の方へ足を踏み入れたのが失敗だった。危険を感じて後戻りしようとした時はすでに遅く、潅木に阻まれて方向修正できなくなっていた。ほとんどの樹木が水平方向に這うように伸びていて、互いに絡みつくように枝張りしているのだ。自転車を通す隙間などあるわけがない。渾身の力で枝をしならせて、そのすきにまずは自転車の前輪とハンドルを挿入する、といった具合だ。しならせた枝がムチのように顔面にヒットする痛みにも耐えなければならない。しかも、進もうとする方向と逆の方向へどんどん逸れていく。50分たってようやく、元の場所へ戻ってこれた。

もうここで1時前になっていた。食欲は全くなかったが、大木の根元にちょうど良い腰掛けるスペースがあり、持参した食糧を捨てるのも勿体ないので、ここで昼食にした。案の定、半分も喉を通らなかった。登頂はすでに諦めていたし、失われた体力も半端ではないので、暗くなる前に下山できるかを心配していた。食事が済んでふと大木の裏側を見ると、比較的はっきりした踏み跡が続いているのが見えた。騙されてはいけないと思い、空荷でしばらく歩いてみたが、道は途切れることなく北へと続いているようだ。

こうなったら時間との勝負だが、自転車と荷物を持って早速進んでみることにした。カナ山への登りにさし掛かると再び道は途絶えたが、ここまで来たらあとは上へ目指して進むだけだ。潅木をかき分け、ついにカナ山の三角点を発見。写真を撮ったら、時間がないのですぐに下山にかかる。

この山を甘くみてツェルトを持参していなかったが、今の時期のビバーグなら一晩くらい大丈夫だろうと考えながら、来た道を戻る。結局、夜叉ヶ妹池は見つけられなかった。というより、探している時間がなかったと言った方が正確だ。行きの時の稜線分岐点からさらに南下して踏み跡を追ってみたが、やはり5分ほどで途絶え、新たな道発見には至らなかった。結局、来た方向めがけて、道のない急斜面を滑り降りる。

道のない所を歩いていると、しばしば獣が驚いて逃げ去る音を間近に聞く。そうでなくとも立ち止まって耳を澄ませば、あちこちで哺乳動物の足音や鳴き声が聞こえる。“奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき”。なるほど、鹿の鳴き声がこれほど心細く響くものとは知らなかった。

最後に林道へ降りてきた場所は、行きの登山口よりも少し手前にある、やや幅の広い道だった。乗車率は2%、まともに乗車できたのは林道に出るまでの数百メートルの下りぐらい。思わぬ形で山頂を踏むことができて、もう一度来る手間が省けてほっとしている。次に薮山に行くときは、ツェルトを忘れないようにしなければ…。

【長浜駅(7:50)〜霜谷橋登山口(9:30)〜作業道終点(10:50)〜稜線分岐(11:35)〜最初の鞍部(11:50)〜道迷いの末、戻る(12:55)〜カナ山(13:30)〜稜線分岐(14:30)〜霜谷橋付近下山(15:55)】

inserted by FC2 system