■北八ヶ岳縦走 MTB          ■自転車旅行記へ


●2007年11月23日


アイゼンの練習と人生初の冬山登山を楽しむ目的で、冬山の初心者向けと言われる北八ヶ岳を縦走すべく11月23日に茅野駅を出発。標高2127mの麦草峠まで距離50km、標高差1340mの国道を走る。麦草峠は、少なくとも10年以上前にクラブの合宿で走った頃は国道最高地点だったが、今は国道に昇格した渋峠に次いで第2位となっている。3日後の11月26日からは冬期通行止となるため、交通量も極めて少ない。標高1750m辺りから道路上に積雪が姿を見せるが、宿泊場所の麦草ヒュッテまでは難なく乗車して行けた。

麦草峠(2127)



麦草ヒュッテは立派な宿泊施設であるが、水道が凍結しているため浴室は使用できなかった。

麦草ヒュッテ




●2007年11月24日


早朝、外気は氷点下15℃と冷え込む。オーバーズボンとスパッツを着用していよいよ雪の上を踏み出した。これまでにない新鮮な感触が足元から伝わる。

水面が凍結している白駒池を経由して高見石小屋に辿り着くと数名の登山者がいたが、基本的に人にでくわすことは滅多になく、登山道は静寂に包まれていた。


白駒湖

全面凍っている

中山へ向けて雪はいよいよ深くなっていくが、トレースはしっかりついているため迷う心配は要らない。雪の上を自転車を押して歩くのは、思った以上に難しい。トレースは幅が狭いため自分が歩くのがやっとであり、自転車はその右側の誰も歩いていないデコボコの雪面上を転がさなければならない。やがて樹林帯を抜けて、最初のピークである中山に達した。

初の雪山登山

中山(2496)
初の雪山MTB登頂

中山でも4名の登山者がいたが、すぐに誰もいなくなった。ここは展望が開けているが風が強く、立ち止まっているとどんどん体温が奪われいく。長居はできない。

続く中山峠の分岐をルートから少し外れたところに営業中の黒百合ヒュッテがあるので立ち寄った。

中山峠(2410)



小屋はそこそこ賑わっていて、ここをベースに登山する人が多いようだ。小屋の中で温かいうどんをすすった後、いよいよアイゼンを着用する。

アイゼンはもちろん初体験だ。装着するのに若干手間取る。いざ装着して歩いてみると、12本の爪がしっかりと雪面にグリップする感覚が伝わり、思った以上の安定感だ。自転車を押しながら歩くために左右の足が重なるようにして進まなければならないため、最初はスパッツにひっかかって転倒しかけたりするなど危うい場面もあったが、やがて慣れてきて普通に歩けるようになった。

アイゼン初装着で歩く



さて、いよいよ天狗岳に突入する。なだらかな山容の北八ヶ岳のなかでも、唯一険しい岩場を有する天狗岳。東天狗と西天狗の二峰からなる山だ。

右肩に自転車を担ぎ左手で岩壁を掴みつつ、足元をよく確認しながら一歩一歩進む。足元を外せば真っ逆さまに滑落していくので自ずと慎重になる。東天狗に登りつめる直前が最も緊張を強いられる場所だ。

高度感のある岩場

東天狗岳に向かう

12時、ついに東天狗登頂達成。

一番の難所を乗り越えた。あとはなだらかな西天狗を往復するだけだ。西天狗の方が標高が少しだけ高く、どちらの山頂にも登山者は2、3名しかいなかった。


東天狗岳

西天狗岳(2646)

その登山者も全て黒百合ヒュッテ方向に引き返していくため、そこから先の縦走は完全に独りになった。

根石岳手前の鞍部に降りてくると、凄まじい突風が継続して吹き荒れる。嵩の大きい自転車を担いでいるため、体に受ける風圧は倍増する。バランスをとりながら慎重に歩を進めたが、風の強い稜線から外れて下り坂に転じると、今度は急斜面のジグザグ道で、トレースの跡も半ば崩れてしまっている。今回の縦走で一番危険を感じたところだ。もちろん、自転車さえなければこんな苦労はしないのは十分承知だが。


風が強い中、天狗岳を下る



樹林帯に入ってやっと安心したが、自転車を担いでの標高差400mの下り坂は足や膝に負担が大きい。この時期は稜線上の山小屋は全て閉まっているため、テント泊以外の縦走者は止むを得ず、一旦標高の低い登山口の小屋まで降りなければならない。やっとのことで14時半に、宿泊地である本沢温泉に到着した。疲れた一日となった。

本沢鉱泉




●2007年11月25日


7時に本沢鉱泉を出発。夏沢峠に向けて再び登り始める。天狗岳から下ってきた道に比べれば、はるかに歩きやすい道だ。積雪のおかげでガレの多い夏道よりも歩きやすいかも知れない。これが反対に下り方向であれば、ほとんど乗車したまま降りれそうなくらいだ。全く担ぐことなく、8時半にあっさりと夏沢峠到着。すでに無人となった山小屋が建ち並んでいる。

夏沢峠(2392)



小休止してから硫黄岳に向けて歩き出す。

硫黄岳への登りも楽なものだった。後半になると足元は雪と岩のミックスとなり担ぐ率も高くなってきたが、たいした苦労もなく10時頃、標高2742mの山頂に到着。思ったほど風は強くなかった。八ヶ岳主峰の赤岳と岩稜の連なる横岳が目前に迫る。

硫黄岳の爆裂火口

硫黄岳(2760)山頂

さてここで選択肢は2つ。難易度の高い横岳を経由して野辺山へ下るか、このまま赤岳鉱泉へ下るか。よく晴れていて風も弱く絶好の条件だったが、自転車を担ぐのが利き腕と反対側になってしまうこと、カメラとして使用している携帯電話の電池が切れかけていること、今後赤岳と一緒に登るために残しておきたいという理由から、今回横岳をやるのは諦めて下山開始を決定した。

硫黄岳から赤岳鉱泉までの下りは積雪のおかげで半分以上乗車可能。ペダルは外したままでサドルを一番低くしてまたがり、アイゼンを着けた足を浮かしているだけで、面白いように進んでいく。登山者とすれ違うこともほとんどなく、あっという間に標高2200mの赤岳鉱泉に着いた。通常は路面の状態や登山者とのすれ違い、路面へのダメージを考えると登山道をMTBで乗車できる場所はほとんどないので貴重な体験だ。赤岳鉱泉から先は逆に、積雪が少なくなってほとんど乗車できなかった。美濃戸山荘からは茅野駅までのロングダウンヒルを楽しんだ。さて、次回はいよいよ厳冬期に突入…。

横岳〜赤岳の岩稜(今回はパス)

赤岳鉱泉(2200)

終わり

inserted by FC2 system