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黄色は林道・車道、は山道を示す

●2015年5月3日(晴)


初日は上毛高原駅からバスに乗って鎌田まで行く予定だったが、忘れ物をしたため予定が変わってしまった。

東京へ向かう新幹線の中で、ズボンの上に履く防雪用のオーバーズボンを持ってくるのを忘れたことに気がついた。装備を忘れるという経験は初めてではない。初めての冬山の八ヶ岳ではスパッツを忘れたし、初めて飛行機に乗る大雪山では燃料を没収されて途方に暮れた。しかし今回は初めてでも何でもないのに大事な基本装備を忘れてしまい、色んな意味でショックである。

オーバーズボンがなくても、そんなに寒い所に行くわけでもないから大丈夫だろうと一瞬考えたものの、天候はどう急変するか分からないし、よく考えれば雨具のズボンすらない。何でもいいからとにかく調達しなければならぬ。

ちょうどペンションから宿泊確認の電話があったので状況を説明。やはり、登山用品を扱う店はこの辺りにはなく、沼田駅の周辺にホームセンターがあるとの事なので、バスに乗らずに沼田へ行ってみることにした。


    


ホームセンターも回ってみたが、結局どれも似たり寄ったりの廉価品しかなく、某作業着チェーン店にてレインパンツを購入(税込1500円)。
これでとりあえず一件落着し、丸沼高原スキー場の近くにあるペンション『森の風』へ向かう。
国道120号を自転車で登っていくが、途中でふと道路脇の側溝を見ると鹿が横たわっていた。





すでに息をしていないようだ。車に撥ねられたのかと思ったが、外傷や血痕が見当たらない。衰弱した個体が山から滑り落ちて溝にはまってしまったのか。

夕方、標高1300mにあるペンション『森の風』に到着した。ここで一泊。ももクロが泊まったことがあるとかで写真が飾ってあった。白い犬がいた。芸能人が泊まるだけあって建物の内装や設備、料理も申し分なく、質の高いペンションだった。




●2015年5月4日(くもり一時雨)


ペンションを出て約10分、丸沼高原スキー場のロープウェイ乗り場へ行く。ロープウェーは8時15分からの営業で、片道だけの販売はしていないので往復のチケット(2000円)を購入。自転車はそのまま乗せられるかきいたところ、折り畳み自転車でないとムリと言われたので、前後輪を外して輪行袋には入れない状態で搭乗。





雪が少ない…。

しかし、連休の真っ只中だけあって(今年は暦上5連休)、スキー客はそこそこ多い。メインのゲレンデにはかろうじて雪が残っているようだ。





約15分で山頂駅に着いた(標高2000m)。麓からは全く見えなかったが、この辺りは結構雪一面となっている。

自転車を組み立てて、スキー客を尻目に出発する。時刻は9時。


  


徐々に急坂になってきたので、途中から12本爪アイゼンを装着。

やはりロープウェイから往復する人が多いようだ。何人かの登山者に抜かれる。6本爪の軽アイゼンを装着している人が多かった。スキーを担いでいる人も若干一名いたが、結局雪が少なくて一度も滑ることなく戻ってきていた。

雪に足をとられるような場面もなくスイスイと進めるのはいいが、あまりにも味気なく雪山を登っているという充実感はあまりない。


   


歩きはじめて2時間半ほどで森林限界に出たが、雪は全く融けて無くなっていた。中央写真の通り、南西にある錫ヶ岳の方が標高も低いのに雪が多いように見える(北斜面だからか)。尾瀬から先の方はまだまだ真っ白であった。

登山道から雪が消えても、着脱するのが面倒なのでアイゼンをつけたままの状態で岩の上を歩いて行った。これまで登ってきた残雪期の山と比べて風もほとんどなく穏やかである。


   


12時過ぎ、
日光白根山の山頂(標高2578m)。46座目の百名山自転車登頂である。いつの間にか頭上に厚い雨雲がおおいかぶさっており、四方が霞んでいて優れた展望なし。五色沼も弥陀ヶ池も水面の雪が融けだしていて、事前に写真で見ていたような神秘的な色合いではなくなっていた。

山頂で食した「薄皮ブルーベリジャム&ヨーグルトクリームパン」が旨かったのが唯一の感動である。バテ気味で食欲がなかったため他のパンは喉を通らなかったが、これだけは食すことができた。

下り先は決めていなかった。調子が良ければ、五色沼へ降りて日光側へ下ることも考えていたが、雨がポツポツと降り始めたので最短距離の弥陀ヶ池方面へ下ることにした。


   


白根山頂から弥陀ヶ池へは急降下する。雪が多く残っていれば滑落しやすく危険なルートであるが、ほとんど夏道が出ているので自転車を担いだ状態であってもさほど危険ではない。





岩陵を過ぎると再び雪が多くなり、弥陀ヶ池に到着したころは雨が本降りになっていた。


   


弥陀ヶ池から先は、残雪の多い超急斜面(冬道)を転がるように降りていく。超急斜面といっても雪は柔らかくなっていて滑落するような危険もなく、安定して下っていける。やがて降っていた雨も止んだ。せっかくエスケープルートを通ってきたのに、単なる通り雨だったようだ。

結局、弥陀ヶ池から1時間足らずで菅沼登山口の駐車場へ辿り着いた。時刻はまだ14時。

時間が余ったので、日本で数少ない標高2000mを越える峠の一つである
金精峠へ行ってみることにしたが、実はここからの方が大変だった。

菅沼キャンプ場付近から金精峠に向けて登山道が延びているが、一面雪に覆われていてどこが道なのかも分からない状態だったので、群馬県側からの通り抜けはあきらめて、栃木県側にある金精トンネルからの往復で登ることにした。





というわけで、国道120号を栃木県境まで走り金精トンネル(標高1850m)までやってきた。トンネルをくぐり、栃木側の出口からみて左側に登り口がある。
こちらは南斜面にあたるので雪が融けていることを期待したが、やはり雪が多くて登り口がはっきりしなかった。
見るからに厳しそうで誰も登ったような形跡がないが、取りあえず行ける所まで行ってみることにする。登山地図では片道で30分とある。


     


のっけから急坂で、どうも木の階段があるようなのだが雪に隠れてどこが道なのか分からない状態である。ところどころ雪が融けているが、急な階段とハシゴが続き、壊れていて使えないものまである。道は狭くて、重いザックが邪魔で仕方ない。坂道の途中にザックをデポして、自転車とカメラと財布だけを持って峠に行くことにした。上着もタオルも飲み物も全てザックの中にしまった。アイゼンはまだ外していなかったので、そのまま装着して登る。





しばらく行くと、「廃道危険、新道をご利用下さい」と書いた標識が現れた。しかし、一本道にしか見えず、どこに新道もしくは廃道があるのか分からなかったので、とりあえずそのまま進んだ。





その先は、両側が切れ込んだザレたヤセ尾根が続いていた。結果的にはこちらが廃道でありコースミスであったのだが、気付かずに進めるところまで進んでしまう。最終的に道はなくなり、ついに戻らざるを得なくなった。写真はヤセ尾根を戻ろうとしている所だが、下りの方がはるかに難しく、足を踏み出すに踏み出せない膠着状態に陥ってしまった。恐る恐る一歩進むたびに、無数の浮き石がけたたましい音を立てて両側の谷間めがけて転がり落ちていった。久しぶりの足がすくむ思いを味わった。

「廃道危険」の標識のある場所まで戻り周囲をよく見れば、右手のヤブの中に細々と続く道を発見した。雪で分かりにくくなっていたが、ここが「新道」で間違いないだろう。しかし、この道も甘くはなかった。





先ほどのヤセ尾根の下を行くトラバースである。雪が積もって道型が完全に無くなっているので、見るからに滑落の危険が大きい。斜面にピッケルを刺しながらだと安定して行けるだろうが、あいにくデポしたザックの中である(ピッケルは今回、一度も使わなかった)。右肩に自転車を担ぐので、行きと帰りの難易度が異なる。二度、途中まで行ったが、怖くなって戻って来た。途中で体を転回できないので、戻ってくる時はゆっくり後ろ向きである。

三度目の正直でようやくトラバースを通り抜けたが、このヤセ尾根とトラバースで合わせて30分近くのロスを費やした。


   


県境に出てからも右往左往して迷った挙句、トンネルから約1時間かけて金精峠(標高2020m)に到着した。厳しかった。
祠のある峠から見える男体山と湯ノ湖の眺望が、僅かな報酬にはなった。群馬県側(菅沼)へ降りる道も確認できた。道が雪でふさがっていたとはいえGPSを頼りに菅沼側から登った方が楽だったに違いない。喉がカラカラに渇いていたので、ザックのデポした所に戻ってペットボトルを一気飲みした。

金精トンネルの駐車場でアイゼンとスパッツを外し、レインパンツを脱ぐ。レインパンツの下にはいていたズボンがびしょびしょに濡れていて、靴の中まで濡れている。汗かなと思ったが、どうやら違う。脱いだレインパンツをよく見ると、無数の穴が開いていた。





転んだり尻をついたりアイゼンで引っ掻いたわけでもないのに、色んな所に穴が開いている。これでは短時間の通り雨でも中が水浸しになってしまう訳だ。これなら何も履いていないのとほぼ同じだ。というわけで、ホームセンターの雨具は登山では全く役立たないと断言できるだろう。

その後、日光市へかけてのロングダウンヒルは、なかなか楽しかった。男体山がそびえたつ中禅寺湖を通り過ぎ、ヘアピンカーブが連続するいろは坂では調子に乗って何台もの車を抜かした。そこから先は観光化が著しく、大渋滞で車も人も凄かった。この日は、日光東照宮の近くにあるホテルに泊まった。1泊17000円と高い宿泊費だったが、50件以上あるうちのここしか予約が取れなかった。高い割には室内の設備も食事も今一つだった。これなら前日泊まった宿の方がはるかにいい。観光以外の目的で観光地に泊まるのは割が悪いからなるべく控えた方がいいのかも知れぬ。

翌日、日光駅から輪行して帰る。ここでもまた忘れ物をしてしまう。日光~宇都宮の普通列車の車内にGPSを置き忘れてきたことを、新幹線に乗り換えた後に気づいた。携帯電話で落し物センターに何度も連絡をとり、無事に日光駅に届けられていることを確認。夕方5時、京都駅に着いてすぐに駅の窓口で着払い郵送の手続きを行ったところ、翌日の正午頃には自宅にGPSが届いた。

体力の低下よりも脳の低下が心配になった今回の登山であった。

おわり

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