御嶽 MTB          ■自転車旅行記へ

●2007年10月6日

昼前、JR高山本線の飛騨小坂駅(標高525m)に着いた。ここから38km、標高差1200mの登り坂が始まる。

3キロの水を背負った40リットルのザックが肩に背中に重くのしかかる。中に入っている荷物の量は夏の縦走時とそう変わらないのに、今回は背中の痛みが半端ではない。そもそも登山用のザックなど自転車のフォームを考えて造られたものではないから無理もないが、こんなことではアイゼンや防寒着等を詰め込んだ冬の重装備時が思いやられる。

標高1450m、ややはっきりしないピークを過ぎて展望台のあたりに来れば、ようやく御嶽が姿を現す。

林道の展望台から見る御嶽

こうして見ると、やはり3000m級の山は格が違う。険阻な岩肌を曝け出して無言で構える姿はちょっと威圧的だ。標高1350m付近のなだらかな平坦地を過ぎて更に標高を上げる。日も傾き始めて気温が下がってくるが、この日はよく晴れていて昼間は10℃を下回ることはない。

午後5時、予約していた濁河(にごりご)温泉・覚明荘に着く。硫黄の匂い漂う露天風呂から見上げた夜空は無数の星でびっしり埋め尽くされており、立ち昇る湯気との区別さえつかない。明日の天気も心配なさそうだ。


●2007年10月7日

ちょっとゆっくりしてしまい、出発が7時半になった。登山口に着いて登山届を投函し、邪魔になるだけのペダルを工具で外す。登山道に入り、途中で出会ったハイカーの話によると、他にも2人組の自転車を担いだ連中とすれ違ったとの情報を得た。富士山以外の2000m級以上の山で担ぎをする人間など殆ど絶滅危惧種に近いと思っていたので、これは是非目撃したいと後を追うつもりだった。が、どうやら6時に濁河を出発したとのことで、結局あきらめてゆっくり進むことにする。

登山道は白山に較べ険しく、担ぎの率がずっと高い。標高2000mを超える湯の花峠は、峠地形ではないが、下方の谷底から湯の香が通りぬけるために名付けられたという変わった峠だ。

湯ノ花峠(2103)

湯ノ花峠で一緒になった登山者と長話などしたため、予定より遅れて11時半に飛騨頂上の鞍部に出た。

飛騨頂上(2800)

足元には、辺り一面の雲海と澄みきった青の三ノ池が広がっている。

三ノ池

ここには、この時期まで唯一営業している五ノ池小屋があるが、翌日の天気は下り坂なので小屋には泊まらずに今日中に下ってしまうと決める。そのまま三ノ池を見下ろしながら登っていく。

三ノ池

やがて、無数にケルンが並ぶサイノ河原に出た。風が断続的に吹き荒れ、硫黄の匂いが鼻をつく。

サイノ河原

続いて、目の前に突如として姿を現す二ノ池。日本一標高の高い所にあるエメラルド・グリーンの美しい湖沼である。その向こうには目前にピークが控えている。

二ノ池(2905)

14時、神社の階段を登り詰めて標高3067mの山頂に立つ。これで3000m峰21座のうち4座を登頂したことになる。独立峰故に360°見渡す限りの雲の絨毯が敷き詰められている。携帯のカメラしかないのが残念なくらいの立派な眺め。

御嶽頂上(3067)

360度の雲海

時間が遅くなったので早速、田の原に向けて下山を開始するが、標高差800mを始終担ぎっぱなしで苦労を強いられる。後方からやってくるハイカーに次々と抜かされつつ時々休憩をして右肩を休ませ、17時にようやくこの日最後の下山者となる。

田の原へ向けて下る

日はやがて暮れ、集落も街灯も交通量もない黒い山と湖に囲まれた暗闇の中の舗装路を突っ走る。途中で何度か出くわす分岐は闇雲に進み、45km走った末に木曽福島駅に到着、3分で輪行を済ませて特急列車に駆け込んだ。


おわり

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