■乗鞍岳 MTB          ■自転車旅行記へ

2011年3月13日(晴)

乗鞍岳といっても飛騨の乗鞍岳ではなく、滋賀と福井の県境にある標高わずか865mしかない乗鞍岳である。標高が低くても冬は厳しい気象条件に晒され、とてつもない積雪のためまともに登れる山ではなくなる。同じ県境上の赤坂山はよく知られているが、この近江乗鞍岳は何故かほとんど紹介されることはない。従って積雪期の登山記録が少なく、どのルートを通って行けばよいのかよく分からないままに出発した。

国道161号の県境にある国境スキー場の手前に、在原集落へと続く県道が分岐しているので、ここを入っていくことにする。冬期は除雪されないとはいえ、少しくらい車の轍が続いているだろうと期待していたものの、右図のような有様。

スノーシューを着け、気を取りなおして進む。重い雪で足にまとわりつく。最初はスノーシューによるトレースがあったものの、すぐに消えてなくなった。

MTBを担ぎあげながら県道を歩く。なかなか進まず、汗ばかり出る。地形図に示された登山道の登り口までやってきたが、見上げる限りとても急で登れそうにない。おそらく廃道であろう。ここから登るのは無理なので、別の取り付きを探しながら先へと進む。気温が高くなり雪が融けだし、スノーシューを履いても20pほど沈む。つらい林道歩きだ。

とうとう峠を越えて下りにさしかかった。あきらめかけてふと右手を見ると地蔵が建っている。その奥の方になだらかな尾根が延びているので、ここから登ることにした。通常は道のない薮尾根と思われるが、背丈の低い草木は全て雪の下。樹木を交わしながらどんどん奥へと進んで行ける。

やがて樹木がまばらになり、急坂を直登するようになる。鉄塔や樹木のてっぺんがすぐ近くに見えるので、多いところでは4〜5mほど積もっていそうだ。

天気が良すぎて日射をまともに受け、サングラスを持参しなかったことを後悔する。過去に富士山でひどい目に遭っているので、雪眼や日焼けが心配になった。木陰を歩いたり目を細くしたりしてなるべく雪を見ないようにしたが、焼け石に水のような試みだ。

この照り返すような日差しの影響なのか急坂のせいなのか、すぐに息切れして途切れ途切れにしか進めなくなった。

電波塔が建つ場所まで登りつめると、雪庇が発達している。この雪庇を乗り越えると、見晴らしが一段と広がる県境尾根に立つことになる。今シーズン初の県境尾根である。

少しは曇ってほしいという期待とは逆に天気はますます良くなり、遮るもののない雪面の上に雲ひとつない快晴となった。この地域では珍しい。

歩き始めて3時間半、乗鞍岳山頂。上谷山〜伊吹山にかけての福井・岐阜県境の山々、その奥に能郷白山、眼下は国境スキー場、反対側は野坂岳〜三重嶽までの野坂山地系、そして竹生島。

日差しが強く雪眼を恐れていたので、それだけの展望を見おさめるとすぐに下山を開始した。


下りは来た道を引き返すことも考えていたが、国境スキー場から往復するトレースがついていたので、これを追ってみることにした。

標高730m付近で県境尾根は急降下する。夏道はこの部分を迂回するように道がつけられているのだが、冬は数メートルの雪に埋もれてしまい跡形もないため、トレースは県境に沿ったまま直滑降している。スノーシューではとても下れないので、アイゼンに履き替えた。

下りだしてすぐ、大変な状態になった。前日から十度近くも気温が上がったためか、足を踏み出す度に足元の雪が崩れて前へ滑ってしまうのだ。少し先が見えないほどの急勾配で、手がかりになるようなものは何もない。いったん足を滑らせてしまうとそのまま加速して助からないだろう・・・と考えると、足元が諤々と震え出した。

やはり来た道を引き返すのが正解だったようだ。後ろ向きで下ったりして何とか通過することができたものの、雪の下に空洞があったり、風が吹いてバランスを崩したりしたら間違いなく大惨事に至っていた。安易にトレースを辿るべきではない。ましてやピッケルもザイルも携帯していないのだ。

その後はトレースを当てにせず、地形図を見ながらなるべく傾斜が緩い所を選んで下って行った。最後は谷へ降りてしまったが、懸念されるような悪谷ではなく、無事国道へ出られた。

今回は、ルート選定の難しさを改めて知らされた。

カシミール3Dにより作成

【在原口(9:05)〜県道峠(10:00)〜p728(11:30)〜乗鞍岳(12:30)〜p789(13:10)〜急坂の手前(13:20/13:30)〜国道161号国境スキー場付近(14:35)】

inserted by FC2 system