■幌尻岳 MTB          ■自転車旅行記へ



●2013年8月14日(曇)

幌尻岳は沢登りがあるから自転車で行くには大変。そう思っていたが、これは一般的に利用されている幌尻山荘経由のルートであり、南側からの新冠ルートを使えば渡渉なしで山頂まで行ける。ふもとの避難小屋まで長い林道があるから敬遠されがちだというが、こんな時にこそ自転車が役に立つであろう。当初は、幌尻岳~ピパイロ岳への縦走を考えていたが、水場がなくヒグマが多いところにわざわざテントを張る危険を考えて、幌尻岳までの往復に切り替えた。結果的に、体力的にも天候的にもそれで正解だったと思う。ヒグマはおそらく心配するほどでもなかっただろう。今回も熊の糞らしきものを数箇所で目撃しただけで、全く気配は感じられなかった。新冠ルートも登山者が増えてきているので、ほとんど出没することはないだろうと地元の登山者も言っていた。

飛行機で関西空港から千歳空港へ。今年も歴代の最高気温を更新する猛暑続きであり本州は晴れ渡っていたが、北海道に入るなり白いガスに包まれた。千歳空港内にあるショップでガスのカートリッジを購入し、JRに乗り換えて苫小牧駅で降りる。ここから乗り換え待ちが2時間以上あるので、駅から少し離れたところにあるココイチで昼食をするために、重いザックを背負って往復4km歩いた。今にも降ってきそうな空模様だった。


16時、新冠駅に到着。
京都では40℃近くあったが、ここでは涼しい風が吹いている。
サラブレッド銀座を走る。
見渡す限り牧場で、サラブレッドが尾を振り回しながら草を食っている光景が見られる。
  新冠町にある「ふかふか亭」というログハウスの宿に泊まる。自分以外は全員ツーリング客で、駐車場には改造したハーレーがずらりと並ぶ。



●2013年8月15日(曇)

小雨の降る中、朝8時にログハウスを出発。この日は、幌尻岳のふもとにある避難小屋(ニイカップ・ポロシリ山荘)まで走る。全70kmの工程だが、舗装路は最初の17kmだけで、残りは全て未舗装の林道。川沿いを走るため小さなアップダウンが多く、予想していたよりも体力を消耗した。


ひたすら長い未舗装林道。
虫、特にアブとブヨが多く、しつこくつきまとう。虫除けスプレーと蚊取線香を持ってきて正解。


11時15分、新冠ダム到着。
未舗装路になってからちょうど20kmの地点。釣りか登山か北電の車ぐらいしか通らない。


  12時35分、こんな所に家があるとは…と思ってよく見ると避難小屋(イドンナップ山荘)だった。誰かいるのだろうか。中に入ってみる。


中は誰もいなかった。かなり荒れている。
住宅さながら厨房には食器棚や冷蔵庫があるが、汚れがひどくて使い物にならない。先を急ぐ。


12:40、そのすぐ先にある奥新冠ゲート。
車でこれるのはここまで。駐車スペースには6台の車が停まっていた。ここから避難小屋まで17kmを歩く。ゲート左の黄色い印から入る。

奥新冠ゲートから先は、路面が少し荒くなる。
MTB3人組の年配登山グループを追い越し、13:20、いこい橋ゲートに着く。固く施錠されており、見ての通り両端にも柵が延長されている。
ゲートの中央部には、歩行者がくぐって通れる回転扉があるが、自転車を通すことは無理だ。前輪を外せばMTBをゲートの下にくぐらせることも可能であるが、時間がかかる。自転車を担いだまま跳ね出した柵の外側をすり抜けた。

いこい橋までは乗車してきたが、いこい橋から先の林道はアップダウンが多く、路面も荒いため、上りはほとんど押して歩いた。右手に新冠川が流れている。 15時40分、ニイカップ・ポロシリ山荘に到着。食事も休憩もなしで8時間弱なので疲れた。




後からきたMTB3人組は17時過ぎにやってきて、小屋は全部で10名ほどになった。小屋の近くに流れている川で水を調達したが、小屋の中にある蛇口からも水が流れている。夕方から雨が降り出した。9時間ぶりの食事であるUFO焼きそばが、ありえないくらいに美味かった。



●2013年8月16日(曇のち雨)

天気は相変わらず悪い状態だ。荷物をできるだけ軽くして、5時出発。

幌尻沢に沿って登山道が付けられているが、高巻きになっていて危険な箇所がある。右側にMTBを担いでいるので行きは難なく通過できたが、帰りは結構苦労した。


その後はヤブの連続。道を見失うほどではないが、背丈ほどの笹薮で進路が分かりづらい箇所がある。 6:00、標高970m渡渉地点。
新冠コースは、二ヶ所の小さな渡渉のみ。
このところの雨で水量が気になっていたが、全く心配するに及ばずであった。



その後、倒木やフィックスロープが現れたが、大したことはなかった。それよりも急登の連続のほうがしんどい…。


8時10分、標高1650m地点。水場の沢を渡渉する。この沢の水はそのまま飲めるらしい。濃い霧に包まれ、小雨が降ったりやんだりしてきた。



この渡渉地点を過ぎると森林限界になり、花畑が広がっている。


エゾツツジ

エゾヤマゼンコ

ミヤマアズマギク

エゾウサギギク

イワギキョウ

トカチフウロ

ヒダカオトギリ


その後はガレ場とハイマツ帯の中を行く。霧に煙る巨岩を過ぎると平取側からのルートと合流して、そこから山頂まではわずか。

9時40分、幌尻岳山頂。
10分ほどいたが、誰もいなかったし、ガスで何も見えなかった。風が強かった。



下りはガレ場にて時間をとられる。渡渉地点にてどろどろの自転車を洗車。一時的にきれいになる。   ところがその後急激な雷雨にやられる。あともう少しで山荘というところだったが、靴の中も水浸しになってしまった。13:25、山荘着。



その後も雨は降ったり止んだりしながら酷くなる一方で、一晩中降り続けた。


●2013年8月17日(雨)

雨が止むのを待って6:00に出発。この日も、一日中降ったり止んだりを繰り返した。初日の長い林道を再び走らなければならない。

6:30奥新冠ダム付近(上写真)、7:55いこい橋ゲート、8:15奥新冠ゲート。いこい橋は行きと同じく、ゲートの端から体を乗り出して通過。


行きと帰りの未舗装林道でのみ、キタキツネを5~6匹見かけた。こちらが通りかかると草むらへ逃げていくが、通りすぎてしばらくすると再び現れてくる。


林道で始終まとわりついてきた虫。平べったい感じのブヨで、無数にいる。指でつぶしてもなかなか死なない。手や背中などを刺された。


12:00、山荘から54km地点。ようやく長い未舗装林道が終わった。さすがに尻が痛くなった。





新冠町からニイカップ・ポロシリ山荘までの道のり(70km)は標高差以上に小さなアップダウンが多く、かかった時間は行きは8時間、帰りは7時間と大差なかった。そこから更に尻が痛いのを我慢して新冠町のとなりの静内町まで10km走った。山荘では、結構何でも揃っている町であるという情報を得ていたがまさにその通りで、まずは目当ての「すき家」へ駆けこんだ。またしても食事なしで8時間近く走り通したため(昼飯はアルファ米のドライカレーだったが、あまりに不味くて一口でギブアップした)、メガ牛丼では足りないくらいだった。そして着替えの服などを調達してスナック街のど真ん中にあるシティホテルに宿泊。晩飯も「すき家」。


●2013年8月18日(雨)


スナック街のシティホテルはかなり古びていたが、朝食はそこそこいいのが出てきた。もともとは千歳まで自走する予定だったが、朝から大雨のため静内駅から輪行することにした。土砂崩れによりダイヤが乱れており、駅では乗客と駅員がもめていた。この日は予備日であったため、もともと予約していた千歳駅前のホテルに宿泊し、翌日飛行機輪行にて行きと同じルートにて帰宅した。


●追記  新冠ポロシリ山岳会によると、現在、新冠ルート(北電管理道)の最終ゲートからの自転車の乗り入れはできなくなっているとの事です。
       従いまして、このブログを見て安易に真似をしないようにして下さい。詳しくは、山岳会のホームページ等をご確認下さい。


inserted by FC2 system