■雷倉・タンポ MTB          ■自転車旅行記へ

2010年8月28日(晴)

ドウの天井に引き続き、雷倉とタンポは山頂のすぐ近くまで林道が延びているという点で以前から気になっていた山である。ところがWeb上で登山記録をざっと調べた限りでは、雷倉もタンポも反対方向の旧根尾村を起点にしたものばかりで、この林道を利用したというのはほとんどない。唯一、3年前にこの林道をMTBで走ってタンポ〜雷倉の縦走をしている記録を見つけた(もちろんMTBは林道にデポ、山中には持ち込んでいないが)。雷倉もタンポもそれなりの藪山であることは分かったが、林道については未舗装ということくらいしか分からない。いずれにせよ、普通に走れる感じだったので安心する。心配なのは山の中に入ってからのヤブの方だが、これも林道がすぐ近くまで通っているのでヤブこぎする距離は知れているだろうと考え、決行することにした。

この日は土曜日だったが、米原から大垣行きの始発電車はありえないほどの超満員電車で、JRは編成を見直す必要があると思った。大垣駅では構内で養老鉄道に接続。サイクルトレインなので車内で自転車を組み立てる。おかげで、終点の揖斐駅を降りたらすぐに走り出すことができた。

旧久瀬村の小津集落では、雷倉は「かみなりくら」では伝わらず「らいくら」だと修正された。「かみなりくら」とは、旧根尾村側での呼称のようだ。同じ山が場所によって呼び名が異なるというのはよくあるが、漢字表記が同一で読みだけ異なるというのは珍しい。

そこから高地谷に沿って奥へ入っていく。道が未舗装になった所から先は砂防工事中で、大規模な橋梁や道路が造られている横を通りすぎる。工事現場の人に、この奥の林道は危ないから行かない方がいいと言われたが、今さら引き返すわけにはいかない。

林道は最初からそこそこの勾配が続く。勾配が10%を超えるような所はコンクリート舗装されているが、体力温存のためにバイクを押して歩く。白倉谷からタンポの方へと続く林道は、あまり使われず下草が生えてはいるものの、それほど酷い状態ではない。ただし、虫が多かった。体長15〜20oほどのアブみたいなムシに始終付きまとわれる。蚊取線香では全く効き目がない。何か所か刺された所が、翌日以降に赤く腫れてきた。

林道でカモシカに遭遇。こちらに気づくと慌てて山の斜面へと逃げて行った。林道はようやくなだらかになったので乗車して進む。まずは雷倉への分岐を通り過ぎ、タンポへ向かう林道を走る。今度はシカが林道の中央で堂々と草を食って寛いでいる。かなり近寄っても、相手が振り向いた瞬間にこちらが静止さえしていれば全く気付かない様子である。20m位まで近寄って目線を合わせても気付かれなかった。

林道を離れ、いよいよタンポに向けて林の中に突入する。地形図には点線で道が示されているが、実際は取り付きに何の目印もなく、道もない。薄い踏み跡があるのでこれを辿る。途中で子イノシシが2匹、猛烈な勢いで斜面を駆け下りてくる。こちらに気付くと、一目散に散らばって逃げて行った。

歩きやすかった道も主尾根に上がった途端、濃密なヤブに変わる。踏み跡を探しだすまで、ひと苦労した。一度見つけてからは、その後は大きく外すことはなかった。ところが途中でカメラを紛失していることに気付き、自転車をその場にデポして再びカメラを探しに戻った。ヤブの中を当てずっぽうに彷徨っている時に落としたため、なかなか見つからず時間を20分ほどロスする。運良く見つけることができたが、運が悪ければ永久に見つけることはできなかっただろう。

林道からの取り付き後、40分でタンポ山頂に到着。山頂付近は藪が切り開かれ、一等三角点だけあって眺めが良い。一般向けの山ではないため、山頂には誰もいない。ゆっくり寛げる空間だったが、まだもうひと山登らなければならないので早々に折り返す。

下りは早く、あっさりヤブを抜け出て林道に戻ってきた。さらに、雷倉へと向かう分岐のポイントまで戻る。右側に細々と雷倉へ向かう林道が分岐していた(左の写真)。何だかとても行く気がしない。もしかして他に分岐があるのではないかと疑ったが、ここしかないと知って愕然とする。

軍手をはめて、笹藪を掻き分けながら進む。とても乗車できる状態ではない。踏み跡のしっかりついた山の中での藪こぎの方がましなくらいだ。

廃林道は市町境に沿うようにして続いているが、途中で本巣市側の林道と合流して四つ辻のようになっている。この市町境の反対側を通っている林道は今も生きているようで、この合流地点からは雷倉へ向かう林道も一旦きれいになる。途中で土砂崩れなどがあるが、基本的には高低差の少ない道で乗車して進める。危うく、ここでもイノシシの親子と衝突しそうになった。

すると、目的地への半分も行かないうちに忽然と林道が途切れる。しかし林道が途切れたと思ったのは目の錯覚で、その奥の茂みを掻き分けると、延々と笹ヤブの中に死んだ廃林道が続いていた。先ほどよりも濃密で、区間も長い。道を見失いそうになることも多く、何度も途中で引き返そうかと思った。

注) 全て林道の写真です。

三年前の記録では、林道は全て乗車できたような感じで書かれていたので、もしそうならば、この三年の間、全くといっていいほど手入れされてなかったのだろう。

長い藪のトンネルを抜けてしばらく行くと、ボロボロの小屋が林道をふさぐように倒壊していて、その先は踏み跡のかけらもなかった。どうやらここが廃林道の終点のようだ。
少しバックすると、右手に尾根へ取り付いたような跡があったので、ここからヤブこぎ開始。

林道自体がこんな有様なので、尾根にはっきりした踏み跡が残っているはずもなく、獣道程度しかない。しかも山頂に近付くにつれてヤブは濃密になり勾配は急になり、踏み跡を頻繁に見失いそうになる。バイクを両手で頭上に持ち上げながら、二、三歩進んでは下に降ろすを繰り返す。

そのうち、足元もヤブで地面が見えなくなるほどで、それ以上先へ進めなくなってしまった。山頂まで残り50メートル。去年の三国岳と全く同じ状況だ。あの時だったら、諦めて引き返していただろう。今回は、どこかに獣道があるはずだとしぶとく探し続けたら、線状に続いている地面を発見。今度は道を外さぬよう注意し、ヤブを掴みながら腕の力で登っていった。

雷倉山頂に着いたが、ここにも人はいなかった。この時期は草木が伸びていて視界を遮っているので、展望は今ひとつだ。しかし、苦労した分、満足感は大きい。

下りは登りに比べると見通しがきくので道筋がある程度つけられる。ただし急登の下りなので、足元は見えず、足は宙に浮いたまま両手でヤブを掴んで体を支えながら下っている状態だ。肩に担いだバイクも、下りではあまり障害にならない。その後、再び廃林道のヤブに突入したが、下りなので若干は乗車することができた。小津集落に戻って再び地元の人と話をすると、昔は林道を(車で?)通って雷倉に行く人もいたが、最近では全く使われなくなったとの事。また、ヒルがよく出る山域らしいが、今回は被害に遭わなかった。

今回の日帰り登山を通じて、山頂近くまで林道があるからといって無闇に計画を立てない方がいいという教訓を得た。また、軍手がかなり重宝したので、ヤブ山では必需品だと分かった。

【揖斐駅(8:10)〜小津集落奥の林道(10:00)〜林道途中から取付く(12:00)〜タンポ(12:45)〜雷倉分岐(13:20)〜林道終点・倒壊小屋(14:15)〜雷倉(14:45)〜林道入口(16:30)〜大垣駅(18:30)】

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