■蓼科山 MTB          ■自転車旅行記へ


 

黄色は車道、青色は積雪のあった車道、赤色は山道を示す

●2015年12月27日(晴)


朝、自転車で自宅を出発しようとしたらいきなり前輪がパンクしていることに気がついた。前日、スパイクタイヤへの交換作業をしていたのだが、チューブが伸びきっていたのが原因だろうか。パンク修理している暇もないので、携帯ポンプでとりあえず空気を入れて出発。なんとか電車に間に合った。

11時前に茅野駅を出発。前輪の空気はまだ漏れているようではなかったが、このままでは不安なので県道沿いにある自転車屋でチューブを新しいのと交換した。

八ヶ岳は実に8年振りであるが、前回と比べて雪の量が格段に少なかった。県道を走っている間は、路面に雪は全くなかった。





ペンション村のあるピラタスの丘へ分け入ると、やがて道路がアイスバーン状になりスパイクタイヤが威力を発揮した。




ペンション ハローウッド


そして15時過ぎに標高1700mのペンションハローウッドに到着。

ピラタスの丘のペンション村には20件ほどの宿があるが、多くの宿が2人以上からでないと宿泊できないのに対し、一人客でも受け入れてくれる貴重な宿だ。今回は山小屋には泊まらずに、このペンションで連泊するという贅沢な計画だ。


●2015年12月28日(晴)



余分な荷物をペンションに置いて朝8時に出発。ビーナスラインをさらに北上し、40分で登山口の女神茶屋に着く。車が行き交う道路以外はうっすらと雪が積もっている。



女神茶屋(1720m)


登山道は最初から雪が積もっていたが、やはり雪の量は少なくアイゼンを着けずにそのまま行ってみる。山頂までのトレースは十分ついている。


   


標高2150mを過ぎたくらいで一旦なだらかになる。再び急登が始まるが、雪の量も多くなってきて滑りやすくなってきたので、ここでアイゼンを着けた。


   


そして3時間半かけ、12時過ぎに蓼科山山頂へ到着。これでようやく、百名山MTB登頂50座目。残り50座を自転車で達成できるかどうかは、今後の登山規制次第だろう。山頂部は溶岩でできた広場になっていて、360度の展望が広がっている。ここで昼食休憩。



蓼科山山頂(2530m)

   
御嶽と北アルプス


この時期、蓼科山から北横岳方面へ縦走するのは難しいため、蓼科山は単独で往復するつもりでいた。しかしこれだけ雪が少なければ、大河原峠まで行って、さらに峠から林道を自転車で走って帰ってこれるかもしれない。ちょうどそう考えていた時、向かい側から単独で北横岳から縦走してきたという年配のオヤジがやってきたので聞いてみると、林道は見てないけど多分走れるんじゃないかと言われたので行ってみることにした。


   


反対側の下りは登りと比べても結構急であり、トレースもオヤジの足跡しかついていなかった。登ってきた道と違い、北斜面なので雪が多かったがラッセルというほどではなかった。山頂付近には小屋が2つあるが(蓼科山頂小屋と蓼科山荘)、どちらも冬期休業中で封鎖されていた。前掛山付近の長い平坦部分を通過するのに時間がかかり、大河原峠まで下って行くのに1時間半かかった。



大河原峠(2093m)


14時過ぎ。大河原峠は見晴らしがよく、浅間山が勢いよく噴煙を吐いている。大河原ヒュッテもこの時期は林道が不通のため冬期休業中となっており、駐車場らしき大きな広場があるが車は一台も停まっていなかった。林道は閉鎖期間中に車が走ったような形跡はなく、積雪は10㎝ほどあり、残念ながら自転車が走れるような締まった雪ではなかった。よく考えればオヤジの発言には何の根拠もなかった。仕方なく、この長い林道を押して歩くことに。





大河原峠から約1kmの所で、なぜか一台の乗用車がありえない角度で駐車していた。車の中に人はいなかったが、周囲の状況からみてしばらく放置されているようだ。車を端に寄せ過ぎたため、雪が融けた後にこのような角度になってしまったのだろうか。いずれにせよ自力では元に戻せないだろう。

さらに先を歩くが、なかなか雪は減らない。ある程度の下り勾配になっていたり、日当たりが良く雪がほとんど融けている部分のみ乗車できるが、それでも乗車率は半分くらい。乗車していても、スパイクタイヤを履いているとはいえ路面がかなり滑りやすくバランスを崩しやすいので、予想以上に体力を消耗する。



コケたあと(手前に落ちているのはペダル)


やがて通行止を無視して入ったと思われる車の轍がはっきりと現れる(途中で引き返していた)。轍に沿って走っていると進むことができるが、少しでも外すと横滑りしてコケてしまう。なかなか難しい。12kmもの長い林道(蓼科スカイライン)を終えて白樺高原でビーナスラインと合流し、ようやく雪から解放される。この間、出会ったのは一匹のカモシカだけだった。

ここからビーナスラインを一気に下っていくつもりだったが、残念ながらスズラン峠までは標高差200mの登り返しだった。この間、エネルギー不足でほとんどペダルを漕ぐ足に力が入らなかった。スズラン峠に着く頃には日も暮れてしまった。そこから再び下りに転じるが、日没になることを想定せずにライトを持参していなかったため、車が近づくたびに道路の端に寄って徐行した。ピラタスの丘からペンションまでの標高差120mの登りは、自転車を押して歩いた。



ペンションに到着


真っ暗の別荘地の中、GPSを頼りにペンションに戻ってきた。地図をろくに確かめずに予定のルートを変更してしまったのが悪いのだが、こんなに長丁場になるとは思ってもいなかった。完全に失敗、こんなことになると始めから分かっていれば大河原峠には行かなかっただろう。


●2015年12月29日(晴)



この日の予定は、八ヶ岳ロープウェイに乗り、山頂駅から北横岳を往復、その後、雨池峠から二つのピークを経て麦草峠まで縦走し、そこから冬期通行止めの国道299を下って茅野駅まで戻る計画だった。

朝8時過ぎ、ペンションを出発。夜の間に雪が降ったらしく、うっすら道路に雪が積もっている。道に迷った末にロープウェイ乗り場に到着。運行は9時からで、まだ少し早かったようだ。8時40分に受付が始まり、まずは自転車を分解しなくてもそのまま乗せれるかどうか尋ねてみたら、少し待たされた挙句、「自転車は分解しても袋に入れた状態であっても一切持込禁止」だとの事。仕方なくロープウェイは断念。



ロープウェイ下の登山道



バス停の奥にあるロープウェイ下の登山道を担いでいくことにした。標高差500mで約2時間の道程である。アイゼンは着けなくても大丈夫そうだ。



頭上を通過するゴンドラ


定期的にゴンドラが頭上を通り過ぎる。自分以外にこの道を通る者はいないようで、みんなこっちを見下ろして驚いている様子が見て取れる。最初は急な坂道のためほぼ担いで登ったが、途中から傾斜が緩くなり押して歩いた。登るにつれて雪雲がどんどん厚くなってきた。2時間弱でロープウェイ山頂駅に到着。

本来ならここから往復するつもりだった北横岳は時間の都合でパスすることにした。別のスノーハイクの男性から「北横岳の山小屋の人はうるさいから行かない方がいいよ」と言われたので、それが本当なら行かなくて正解だった。



雨池峠付近(2240m)



そこからほぼ水平な道を20分ほど歩けば雨池峠に到着。天気はあいにくの雪雲のままだが、ここまで来ると樹氷が発達していて周囲は白一色の冬山らしい風景になってきた。ここから麦草峠に向けてミニ縦走を開始する。





麦草峠まで二つの小ピーク(縞枯山、茶臼山)があるが、どちらも短いが急な登りですぐに息が切れる。縞枯山への登りの途中でアイゼンを装着。そこから先は少しずつしか進めなくなり、後続にどんどん抜かれてしまった。





縞枯山(2403m)



11時40分。縞枯山の山頂部に到達すると、天候が回復して見晴らしがきくようになっていた。

続く茶臼山は展望が全くない山頂で期待外れだったが、少し西側のピークが展望台になっていたようだ。知らなかったので素通りしてしまった。



中小場(2232m)から茶臼山を振り返る



茶臼岳を下った所にある三角点(中小場)、続く大石峠を経て、13時20分、国道299号の麦草峠に到着。しかし、予想していたのと様相が違う。

峠にある麦草ヒュッテが営業中だからある程度人がいるだろうと思っていたが、誰もいなかった。足跡も少ない。それに麦草峠は、冬期通行止とはいえ今年は暖冬だし、大河原峠と違ってヒュッテも営業しているから、路面の雪は大したことないだろうと予想していた。



麦草峠(2120m)


ところが写真の通り、到達した麦草峠は大河原峠以上に積雪が豊富だった。愕然。また何kmもの林道歩きをしないといけないのか…。

とりあえず、一台も停まってない駐車場で昼食休憩。8年振りのヒュッテに立ち寄ってみるつもりであったが、雪が多くて行くのが面倒なのでやめた。雪の上に座りアイゼンを外し、ペンションで作ってもらったおにぎりを頬張る。おにぎりは冷やされてだいぶ固くなっていた。気温は氷点下を下回っている上に冷たい風が峠を西から東へ勢いよく通り抜け、手袋を外して食事をしていたら手が凍傷になりそうなほど痛かった。じっとしていると寒いのですぐに出発する。やっぱりヒュッテで休憩すべきだった。



国道299号冬期通行止



さて、麦草峠からの下り。最初は押して歩いたが、大河原峠と違って雪が固く締まっていて沈まない。車の轍がたくさんついていて、よく見ると人の足跡やワカンの足跡もある。麦草峠までの片道6kmの区間を歩いてきている人がいるわけだ。雪が深ければ3時間以上かかるだろう。試しに自転車にまたがってみたら、アスファルトの上を行くようにスムーズに加速した。これは楽しい!わざわざロープウェイの下道を担ぎあげた甲斐があった。



麦草峠ゲート(1800m)


35分ほど下れば、ゲートに到着。封鎖されたゲートを境に、それまで100%積もっていた道路上の雪が完全に消えてなくなった。ゲート封鎖中は、ここまで車で来て徒歩で麦草峠まで行く人も稀にいるようだ。ゲートから先はスリップすることを気にせず、茅野市街まで一気にロングダウンヒル。ただ相変わらず気温が低く、自転車で下っていると、登山靴を履いていても両足のつま先が凍るように冷たくなるので、ときどき休憩をはさみながら茅野市街まで下った。


   
(左)蓼科山、北横岳、縞枯山、茶臼山  (右)天狗岳、硫黄岳、赤岳


ふりかえった八ヶ岳連峰の景色。ここ数年間の遠方登山ではずっと悪天候が続いたが、今回ようやく好天に恵まれた。

今回の登山を含め三回にわたり、八ヶ岳連峰のほぼ北から南までをおおよそ行ったことになる。そのどれもが天候が安定していて(部分的に悪い日もあったが)、すばらしい景色を見せてくれた。いずれ機会があれば、また行きたいと思う(自転車ではもう行かない)。

おわり

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