■和束          ■自転車旅行記へ

●2006年6月4日

できるだけ峠を登りたかったので、南方でまだ行っていない峠をつないだコースを設定した。とはいっても昨日と同じ4つだが、この辺りは峠が少ないので仕方がない。

2日連続で峠4本100km弱はきつかった。10時半過ぎに出発。宇治の木幡から南郷へ抜ける長坂峠は、1994年10月の耐久ラン(当時所属していたクラブの年1回の耐久レース)で走ったことがあるが、260km2300mupを走った最後の峠だったので、苦しかったという記憶しかない。久しぶりに登ってみると、なかなかの急坂で、峠を越した後にもさらに急な上り坂があり、これを登ったら帰宅しようという考えになった。しかし、峠で休憩中、夏合宿の苦しかった記憶が甦り、時間がかかって暗くなってでも最初に決めたコースを走りぬこうと決心した。



12年ぶりの長坂峠

 

鹿跳橋から信楽方面へ向かうR422は、先月に信楽へ行くのに走ったのと同じ道。緩やかな上り気味の道だが、前回の時よりは確実に苦しい。途中の分岐では、前回は信楽へ向けての下りだったが、今回はさらに峠を目指して上り続けることになる。ここでバテてはいけないので、分岐の近くの食堂で昼メシを食うことにした。この辺りは自販機が全くなく、ドリンクも切れていたのでボトルに給水させてもらった。

分岐からほどなくして峠のトンネルが見えてきたが、トンネルの上を通過する旧道があるのでそちらを目指す。峠の入口にはバリケードが設置されていて、自動車は進入できないようになっていた。旧道は狭い峠道だがまだそんなに廃れてはおらず、涼しい木立の中、快適に走ることができた。頂上付近はほぼフラットで、どこが峠なのか明確ではなかった。一応、いちばん盛り上がってるかと思われる場所で写真を撮ったが、全く峠らしい感じではなかったが、無理やりここが裏白峠であると思い込んで2峠目をゲットした。



裏白峠?
(かなり怪しい)


 

下っている途中で、アメリカンに乗ったライダーが抜き去っていった。下りきったところで再び新道と接近するのだが、ここは新道に乗り上げずに、間髪入れずに続く殻池峠に突入しなければならない。

分岐の所で立ち止まって地図を広げ、位置を確認していると、少し前に止まっていたアメリカンの男性(年齢60位)が「どこに行くんや、道教えたろけ」と声をかけてきた。とりあえず進む方向を教えてもらい、礼を言って峠への上り坂をゆっくり登っていった。しばらくして後ろからアメリカンに乗った先ほどの男性がやってきて、いろいろ話しかけてくれたので息切れしながら答えた。そのまま抜き去ってしばらくするとまた男性が上から戻って来て、「もうちょいで峠やけど、分岐があるからそこまで案内したるわ」と言って峠まで併走してくれた。

そして峠に到着。



殻池(からいけ)峠

 

峠で写真を撮るために自転車から降りていると、どこに行くのかと聞かれたので、和束まで行って犬打峠を越えて京都市内に戻る、と答えたら、峠を下りきったところで分岐があるから、そこまで案内してくれると言う。下りながら色々会話をしていて分かったのだが、この男性は木津方面で月2回ほどの頻度で行われるロードレースの監督をしているそうだ。しかも鬼監督のようで、普段は選手をオートバイに乗りながらしごいているようだ。レースのための苦しい特訓話を色々話してくれたが、自分はレースに出ることなど毛頭考えていないので、「やっぱりレースに出るのは大変ですなぁ」という感じで聞いていた。ところが、知らない間に、自分がレースに出場することが前提である方向へ話は向いていった。

下りは、砂利や舗装のめくれなど路面状況の悪い道で、「パンクするから気ぃつけて走れや」と叫ばれているのだが、後ろからオートバイで併走されると、あおられているような感覚になり自然とスピードが出る。案の定、下りきったところでリム打ちパンクした。今年になって、遠出の途中でパンクするのは初めてだ。チューブ交換している間に、男性がドリンクを近くの自販機で購入して差し入れてくれた。ここでもレースの話に花が咲き、名刺まで頂戴した。名刺には「高谷秀勝」と書かれていた。

チューブ交換が終わり、ここから和束大橋のローソンまでついていってくれるという。ゆるやかなダウンヒルの道を、監督にしごかれる選手のような気分でひたすら漕いで走った。後ろから、「ここは時速40kmで走らなければレースペースについていけない」とか言われるのでプレッシャーもかかる。死ぬほど苦しかったが、ここで気を抜いたらリタイアになるのだとイメージして、歯をくいしばって必死になって走った。

途中で、「前を走ったるから、後ろにぴったりついて来い」と言われたので、アメリカンについて爆走することになった。学生の時以来のスリップ体験だ。「30cm以内をキープしろ」と言われるが、前から対向車が来るとつい遠慮して1mまで離されたりするので、必死でついていく。メーターを見ると、時速45~55kmペースで、他のロードレースの連中をもの凄い勢いで抜いていく。なかなか爽快な気分だが、和束のローソンに着いた頃にはヘトヘトになった。

ここでもドリンクをおごってもらい、しばらく会話した。「これはまだ甘い。レースではこの道は時速60km以上出る。」と言われた。

その他にも、夏のレースに出るまでにはあと5kgは痩せろ、トレーニングは毎日欠かさずやれ、煙草は止めろ、作業着ではなくちゃんとしたレーサーパンツを穿け、給料の全ては自転車につぎ込め、など様々なアドバイスを頂いた。

その後、犬打峠の分岐までついてきてくれて、そこで別れることになった。最後に、「夏のレースでは見違えるようになってろ、またメールくれ」と言って去って行った。

犬打峠への登り坂はかなりの急坂であったが、今までのしごきに比べれば大したことなく、まるでクールダウンしているかのような気分で峠に到達できた。



犬打峠

 

自転車で走っているとたまにこういう人物に遭遇することがある。一人でのんびり走る予定のはずが、なかなかの珍体験ができた。自分はメールのやり方がいまいちよく分からないので、まだメールは送れていない。

終わり

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